↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。  作者: Sakusaku
ARC:5 女装と銃撃に魅せられた若いVTuber...... チハヤ•チアキ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/86

76: お父さんとドライブに出かける…


 077


「それで……お前の妹は……元気にしてるのか……」


 ラーメンを食べ終えた後……俺は父さんの店の片付けを手伝いながら、いろんな話をした……


「今は高校三年生になりました……もう少し稼ぎを増やさないといけません……」


「そうか……」


「でも、宮島大学の推薦枠を狙えるらしくて……学費のことは少し安心できそうです……」


「けど、その他の出費はまだあるんだろう……」


 父さんは道具を洗う手を止めて、真剣な表情で俺のほうを振り向いた……


「はい……そう言えばそうですね……」


「なら、私が手伝おう……」


 父さんは手を拭くと、棚の上に置いてあった金庫箱を取りに行って……俺に差し出した……


「父さん……いや、俺は……」


「なぜだ?……たった百万円だ……私なら稼げる……」


「……でも、俺たちは会ったばかりです」


「それがどうした……今まで私はお前のことを一度も気にかけたことがなかった……遅くなったが……今からでも、お前と妹を助けなければならないんだ……」


「…………」


 俺は父さんの顔をじっと見つめた……こんなに決断も行動も早い人だとは、想像すらしていなかった……


 子供のことなら……どんなことでも何とかしてやる……それが親としてやるべきこと、あるべき姿……


 さっき父さんはこう言っていた……可哀想がる必要も、許す必要もない……ただ父親としてやるべきことをやらせてほしい、と……


 だから俺は、その百万円の入った箱を、素直に受け取ることにした……


 これは、これから妹の面倒を見るための金だ……百万円なんて二年も持たずに使い切ってしまうだろうけど……これが、俺の父さんが初めて見せてくれた、父親としての助けであり、務めだった……


「足りなくなったらまた言いに来い。妹にも……美冬にもそう伝えてくれ……」


「……はい、父さん……」




 夜九時頃、店の片付けが終わり、俺はタクシーを呼んでホテルに戻ろうとしたが……父さんが引き止めた……


「アキト……ホテルまで送ろうか?」


「父さん、車持ってるんですか?」


「あるさ……ついてこい……」


 父さんは駐車場のほうへ歩いていった……俺は正直、父さんが車を持っていることに少し驚いた……つまり、ラーメン屋の商売はそれなりに成功しているということだ……


「この歳になっても運転できるなんて、信じられないですね……」


「おいおい……こう見えて私も、それなりに走り屋だったんだぞ……ほら、あれが私の車だ……」


 最初は電気自動車か、年寄りらしいコンパクトなファミリーカーにでも乗っているのかと思っていた……でも忘れかけていた……そんな車に乗るような人なら、青山なわけがない……


「へえ……結構パワーのある車に乗ってるんですね……」


 父さんが乗っているのは……漆黒のGTR R32、いかつい佇まいだった……外装はそれほど大きく手を加えられておらず……ホイールを替えて、スポイラーを外しただけのようだった……


「そうだろう……ほら乗れ、送ってやる……」


「あの、父さん……」


「ん?……」


 俺はシートベルトをしっかり締めた……中はハンドルとシートだけがスポーツ仕様に替えられていた……


「せっかく会えたんだし……ドライブでもしませんか?」


 父さんは軽く笑って……エンジンをかけた……


「いいだろう……親子のイベントってのはこうでなくちゃな……」


 高速道路へと向かう……


「まさか、母さんが父さんと別れたのって、金を全部これに突っ込んだからじゃないでしょうね……」


「何を馬鹿なこと言ってるんだ……あの頃は任天堂のゲーム機すら買う余裕がなかったんだぞ……こんなもの買えるわけないだろう……」


 父さんは苦笑いした……まあ……こういう際どい冗談が得意なのは、俺たち二人とも同じらしい……


「この車、どこかいじってるんですか?」


「大したことはしてないさ……足回りを少し柔らかめにセッティングして、ブーストを軽く上げて、ホイールとタイヤを替えただけだ……それでも十分パワーはあるがな……」


 高速に乗ると……父さんはアクセルを強めに踏み込んだ、とはいえ法定速度を超えるほどではなかった……


「父さん、この車どのくらい乗ってるんですか……」


「大阪に来て二、三年目からだから……もう十何年か前になるな……」


「へえ……運転うまいですね……誰かと走ったりしてたんですか?」


 父さんは首を振った……


「私はただ、環状線のあたりをぐるぐる走ってただけだ……あれ、何て呼ぶんだったか……ザ・ループだったか?」


「走り屋やってなかったなんて……信じるとでも?」


「よせよ……私を何歳だと思ってるんだ……年をとっても、たまには車を走らせたくなるもんなんだよ……」


 俺は父さんが昔の話をするのを聞きながら、時々、こんな時間がずっと続けばいいのに、と密かに思っていた……


「父さん……」


「何だ?……」


「再婚はしなかったんですか?」


 父さんは大声で笑った……


「まあな……何度か新しい相手を探そうとしたこともあったさ……でも、いつも気づかされるんだ……この世に、お前の母さんより良い女はいないってことにな……」


 変な言い草に聞こえるかもしれないけど……あれほど愛し合っていた両親なら、内心ではお互いを思い出すこともあったんだろうな、と俺は密かに思った……


「俺も……何人か付き合った人はいます……本気で口説いたこともあれば、敵同士なのに恋に落ちたこともあるし、相手を騙して惚れさせたこともある……でも結局、俺を本当に愛してくれる人に出会ったのは、三十歳が近づいた頃でした……」


「まるでお前、マフィアか何かの危険な仕事でもしてたみたいな言い草だな……」


「いやいや……でも本当の話ですよ……」


「正直に言うとな……お前の母さんは……見た目は物静かに見えて……実はかなりお茶目な人だったんだ……」


「俺の彼女も、まさにそういう性格です……」


 俺たち親子は顔を見合わせて……そのまま二人で笑い合った……親子はよく似るって言うけど……本当にその通りだと思った……


 生き方も、恋愛のことも……まるでコピーして貼り付けたみたいに、そっくりだった……


 やれやれ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。