59:一人で全部やろうとしないでください。
060
「まずはモデルのデザインだけど……コンセプトは考えてある?」
「一応考えてはあるよ……お昼に画像送るね……」
新しい朝……十月上旬……新学期が始まった……冬に向かう季節……
「はい……できましたよ……」
アメリアはユウタの制服を整え、シャーロットの服も少し整えてあげた
そして二人の鞄も準備してくれた
「二人とも似合ってるわね……さあ……行ってらっしゃい……気をつけてね……」
「「行ってきます……」」
二人は一緒に家を出た……大学と学校へ向かって……
「へえ……君の大学いいなぁ、講義半日だけで帰れるなんて」
「羨ましがるのも大概にしなよ……そんなの週に一、二日だけだから。あなた、一つの授業が丸一日ある講義なんて経験したことないでしょ……」
「……大学って、なんか面倒くさそうだな……」
それを聞いたシャーロットは、ユウタの頭をゴツンと叩いた
「このバカ……何ブツブツ文句言ってるの……あと一、二年したらあなたも大学入るんだからね……」
「あーもう……そんな乱暴にしなくてもいいじゃないか……」
「それと今日から私、病院実習で一ヶ月行くから……モデルの件も少し先延ばしになると思う……」
彼女は、もしVTuberとしてうまくいかなければ看護師になるという覚悟を、ある程度もう決めていたのかもしれない……
そうなれば、挑戦したいという気持ちはすぐに消えてしまうだろう……
もちろんユウタは彼女の決断を尊重するつもりだった……でもなぜか、彼女に看護師になってほしくないという気持ちがどうしても消えなかった……
「頑張ってね……」
「あ……うん……」
二人は駅へ向かって歩いた……制服姿の学生たちの光景にはもう見慣れていた……
宮島大学と宮島女子学園は、八月末に夏休みが同時に終わるからだ……
でも今回は、宮島学園の制服を着た生徒がいつもより多く見られた……
黒い制服……
「まだ制服変えてないんだね……」
「さあね……」
二人は同じ路線の電車に乗った……電車を待っている間、周りの話し声が聞こえてきた……
「ねえねえ、見た?……」
「うわ……めちゃくちゃ綺麗じゃん……」
「金髪だ……ハーフかな……」
「彼氏いるのかな……」
でも一方で……
「あいつ、マジであの子の彼氏なのかよ……」
「まさに高嶺の花と冴えない男って感じだな……」
「なんか可愛くない感じ……なんであんなのと付き合ってるんだろう……」
「だよな……あんな相手と付き合うくらいなら俺と付き合ってくれた方がいいのに……」
見ての通り……それを聞いたユウタは、イヤホンの音量を何倍にも上げた……
[はぁ……もう勘弁してくれよ……]
彼はスマホをいじっているシャーロットをちらっと見た
今日も彼女はいつも通りお嬢様学校の制服を着ていた……でも今日は茶色のコートを羽織っていて……そのコートは彼女の体には少し大きめだった……そのせいで、小さくて可愛いハムスターみたいに見えた……
[可愛い……]
そして電車が来た……
今はラッシュアワーで……いつも以上に混んでいた……
彼女と彼は押し合うようにして立つことになった……
電車が動き出すと……人がさらに動いてきた……
ユウタとシャーロットはドアの近くに立っていた……そして……
今、彼はまるでシャーロットを壁ドンしているような体勢になっていた……
彼の顔は真っ赤だった
彼女の顔も真っ赤だった
「離れなさいよ……」
彼女は彼を押しのけようとした。でもユウタにはできなかった
「無理言うなよ……こんなに人が多いのに……君にぶつからないようにするだけで精一杯なんだから……」
「……………」
でも電車が動くたびに……人がどんどん押し寄せてきた……
カーブに差し掛かると……人がどっと押されて……ユウタはバランスを崩した……
そして瞬間的に、彼の体はシャーロットにぴったりと密着してしまった……
「ちょ……あなた……」
「ご……ごめん……」
彼は体を離そうとしたが、人はどんどん押し寄せてきた
「うっ……うっ……」
ユウタは全力を振り絞った……でもまあ、しょせんはコンピューターオタクの彼にどれほどの力があるというのか、そうだろう?
「離れられない……」
「……………」
シャーロットは心の中で思った、どのみち他に選択肢はないんだから……30分足らずくっついているくらい、どうってことないでしょ……
彼女は右腕で彼の体を支えるように掴んだ
「宮島……」
「……………」
彼女はさらに顔を赤くした
「ちょっと……あなた……」
「黙ってて……ただ、あなたが倒れないように支えてるだけだから……」
「たった三十分よ……別に何でもないから……」
「うぐ……」
ユウタの心臓は、チューニングされたエンジンよりも激しく鼓動していた……彼の顔は彼女に近づきすぎて、もうキスしそうなくらいだった……
彼は彼女の顔を見つめた……彼女も瞬きもせず彼を見つめ返した……
二人の息が混ざり合った……
同じバラの香り……
「……………」
ユウタは彼女に顔を近づけていった……どんどん、どんどん近づいていく……
え……え……ちょっと待って……これって……
「エモくん……何するつもり……」
「………」
彼は何も言わず、さらに顔を近づけてきた……
「やめてよね……もしそんなことしたら……絶対殴るから……」
「……………」
でも――
「グゥー……」
「は?」
突然、彼はそのまま立ったまま眠りに落ちてしまった……
「……うーん……」
彼の顔は彼女の肩にもたれかかっていた……まるで二人が抱き合って立っているような光景になった……
「全然しっかり寝てないんだから……このバカ……」
相変わらず夜更かししていたようだった……
「はぁ……たまには私に頼ってくれてもいいのに……」
駅前……
ふとユウタは、自分の顔が濡れていることに気づいた……
「うわっ!……」
シャーロットがトイレの水道の蛇口をひねって、彼の顔にかけていたからだった……
「いい加減起きなさいよ……」
「殺す気か君は!?」
「だってあなた、ずっと寝てるんだもん……」
「ごめん……昨夜、君のモデルの設定作業でバタバタしてて……」
二人は駅を出て……学校と大学へ向かって歩き出した……
「ふわぁ……」
「今頃あくびなんてしてる場合?また水かけられたいの?」
「勘弁してよ……君ってほんと……」
「それで……この前私が言ったこと、覚えてる?」
「何のこと?」
彼女は拳を握り、また殴ろうと構えた
「わかったわかった!!急がなくていいって言ったよね!」
「そう……私が雇い主で、あなたは雇われる側なんだから、私の言うことに従うべきでしょ……」
ユウタは黙り込んだ……
こんなに急いで作業しても意味がないことは分かっていた……それでも彼女のためにやりたかった……
「わかった……」
「ゆっくりでいいから……一ヶ月も時間あるんだから……」
「……………」
「あなたが早く私の願いを叶えてあげたいって思ってくれてるのは分かってるけど……そんなに焦る必要はないからね……」
「うん……」
彼女は彼の顔を見た……ユウタも少し寂しそうな表情を浮かべていた……
「まったく、あなたって……何かあったらちゃんと言いなさいよね」
彼女は前にユウタが言った言葉をそのまま返した……
「……………」
「いい?あなたが困ってること、必要なものがあったら、ちゃんと私に言うこと……同じ家に住んでるんだから、遠慮なんてしなくていいの……」
「……………」
「一人で全部抱え込まないでよね……」
「は……はい……お嬢様……宮島さん……」
彼女は腕を組みながら、彼にツンと顎を上げて見せた……
「それと、名前のことだけど……」
「え?……」
「もう苗字で呼ぶのやめてよね……家で呼ぶ時、紛らわしいから……」
ツンデレ……本当にそうだよね……
「じゃ……じゃあ……シャーロット……」
「うぐっ!……」
彼にそう名前を呼ばれた瞬間、彼女は動揺を隠しきれなくなった……
「もう呼ばなくていい!!やっぱなし!」
「はぁ!?……君が言ったんじゃないか」
「だから、下の名前で呼ばなくていいって言ってるのよ!!」
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