表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。  作者: Sakusaku
ARC 4:アビゲイル・エヴリン――看護師VTuberにして、遠方より来たる上流階級の令嬢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/65

57:何かあったら教えてください。

 058


 雨が降り始めた……だんだん強くなっていく……風もどんどん強くなっていく


「まずいな……あなた濡れてない?」


「にゃあ!!」


 猫は服の中でさらに奥に隠れた……風がどんどん強くなってきた……


「……ああもう……」


 しかも今は秋の季節だった……周りの空気もかなり冷たくなってきていた……


「大丈夫だよ……傘さえあれば……濡れることはないから……」


 でも言い終わらないうちに……さっきよりも強い風が吹き抜けた……


「あっ!」


 母が持たせてくれた傘は、風にあおられて飛ばされてしまった……


「にゃあ!」


 猫は慌てて服の中に潜り込んだ……


 シャーロットは雨をしのげる場所を探して走り続けた……でもどこにも見つからなかった……


「ずぶ濡れだ……はぁ……」


 しばらく走って疲れてしまい……彼女はしゃがみ込んで、自分の背中で猫に降りかかる雨を防いだ……


「にゃあ……」


 猫の声は震えていた……相当寒いのだろう……


「大丈夫だよ……私が雨をよけてあげるから……あなたは平気だからね……」


 雨はさらに強くなり……風はもっと強くなった……


「寒いね……」


 あの日も、同じだった……


 体も濡れて……寒くて……心も痛かった……


 ああ……


 どうして私は……こんな目に遭わなきゃいけないんだろう


「にゃあ……」


 彼女は猫を見つめた……この子も、あの日の自分と何も変わらないように思えた……


 自分は捨てられた……この子も捨てられた……自分は寒い……この子も寒い……自分は濡れている……この子も濡れている……


「誰か……」


 彼女は寂しかった……でも、もうあんな思いはしたくなかった……


「誰か……」


 こんな時に……ふと、ある人の顔が浮かんだ……


 知り合ってからまだ半年も経っていない人……それでも今、一緒に暮らしている人……




「助けて……ユウタ……」




 彼女はその名前を呼んだ……たとえ彼と親しくなれば、また同じことが繰り返されるかもしれないとしても……


 それでも彼女は彼の名前を呼んだ……


 なぜ呼んでしまうのか分からなかった……でも、彼のことが頭から離れなかった……


「傘、いる?」


 降り注いでいた雨がふと消えた……大きな影が彼女の視界を覆っていた……


 シャーロットは上を見上げた……そこには、さっき自分が名前を呼んだ少年がいた……


「……エモ……くん」


「ごめん……大きい傘を買いに行ってたから遅くなって……」


 ユウタは、さっき風で飛ばされたシャーロットの傘も一緒に持ってきていた……


「あなた……助けて……」


「……………え?」


「ううん……なんでもない……」


「それで……その抱えてるのって……」


 シャーロットは布を開いてユウタに見せた……彼はそこに、上着の中で丸くなって眠っている猫を見つけた


「おお……猫か……にゃんにゃん」


 彼が手を伸ばして撫でようとすると……すぐに猫に引っかかれた


「にゃあ!!!」


「痛っ!!……このバカ猫……」


 彼は驚いて、ドタッと尻もちをついた……


「はっ……はは」


 その様子を見たシャーロットは、思わずくすっとしてしまった……


「覚えてなさいよ……家に着いたら絶対お風呂に入れてやるからな……」


「はは……はははは」


 ユウタの様子を見たシャーロットは、思わず声を上げて笑ってしまった……ユウタは驚きながらも、一緒になって笑った……




「ただいま帰りましたぁ……」


「ただいま帰りました……」


「おかえりなさ……え!!びしょ濡れじゃないの……どうして雨に打たれてきたのよ……」


「それが……その……」


 彼女は上着を開いて母親に見せた


「にゃあ!!」


「あら猫ちゃん!!どこで見つけたの?」


 アメリアはすぐに猫を抱き上げた……猫もそれが気に入ったようだった……


「道端に捨てられてたんです……それで見つけて……あと、この子は女の子だから、優しくしてあげてくださいね……」


「あら……じゃあ一緒にお風呂に入れてあげましょうか……」


「お母さん……私もう大人なんですよ……お母さんと一緒にお風呂なんて、子供の頃だけですよ……」


「いいじゃない……恥ずかしがることないでしょ……さあ、早く……」


 アメリアはすぐに娘の手を引いてお風呂へ連れて行った……


「ユウくんも、一緒にお風呂入る?」


「いいんですか!!!あ……えっと……いや……え?」


「お母さん!!早くお湯の準備してよ……」


「あなたって本当に気分屋よね……さっきまで機嫌良かったのに……はぁ、お母さん困っちゃう……」


「それ誰のせいだと思ってるの……」


 女性陣はお風呂へ向かった……


「賑やかでいいなぁ……この家族……」


「うちもこんな家族だったらいいのにな……」




「エモくん……お湯、用意できたよ……」


 一時間ほど経って……彼女はユウタをお風呂に呼びに来た……


「うん……ありがとう……それで、あの猫は……」


「セバスチャンのこと?お母さんが毛を乾かしてあげてるよ」


「それ、猫の名前なの……」


「うちの母、ああ見えて筋金入りの猫好きなんだよね……」


 彼女はちらっとユウタを見た……


「何?」


「ううん、何でもない……ほら!早くお風呂入っておいで……風邪引いちゃうよ……」


「うん……」


 ユウタはタオルを手に取り、部屋を出ようとした……でもふと振り返ってシャーロットの方を向いた


「なあ……宮島」


「何?」




「何かあったら、いつでも言ってよ……」




 シャーロットは彼の顔を見つめた……ユウタの表情はとても真剣だった……


「……うん、ありがとねエモくん……」


「あなたって本当に優しいね……」


 彼女は彼に微笑みかけると……自分の部屋へ戻っていった……


「何かあったら、あなたに相談するね……」


 そう言って、彼女はドアを閉めた……


「……いつでもどうぞ……」

誰かに心を開くことって、実はそんなに難しいことじゃないんだよ、チャルちゃん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ