57:何かあったら教えてください。
058
雨が降り始めた……だんだん強くなっていく……風もどんどん強くなっていく
「まずいな……あなた濡れてない?」
「にゃあ!!」
猫は服の中でさらに奥に隠れた……風がどんどん強くなってきた……
「……ああもう……」
しかも今は秋の季節だった……周りの空気もかなり冷たくなってきていた……
「大丈夫だよ……傘さえあれば……濡れることはないから……」
でも言い終わらないうちに……さっきよりも強い風が吹き抜けた……
「あっ!」
母が持たせてくれた傘は、風にあおられて飛ばされてしまった……
「にゃあ!」
猫は慌てて服の中に潜り込んだ……
シャーロットは雨をしのげる場所を探して走り続けた……でもどこにも見つからなかった……
「ずぶ濡れだ……はぁ……」
しばらく走って疲れてしまい……彼女はしゃがみ込んで、自分の背中で猫に降りかかる雨を防いだ……
「にゃあ……」
猫の声は震えていた……相当寒いのだろう……
「大丈夫だよ……私が雨をよけてあげるから……あなたは平気だからね……」
雨はさらに強くなり……風はもっと強くなった……
「寒いね……」
あの日も、同じだった……
体も濡れて……寒くて……心も痛かった……
ああ……
どうして私は……こんな目に遭わなきゃいけないんだろう
「にゃあ……」
彼女は猫を見つめた……この子も、あの日の自分と何も変わらないように思えた……
自分は捨てられた……この子も捨てられた……自分は寒い……この子も寒い……自分は濡れている……この子も濡れている……
「誰か……」
彼女は寂しかった……でも、もうあんな思いはしたくなかった……
「誰か……」
こんな時に……ふと、ある人の顔が浮かんだ……
知り合ってからまだ半年も経っていない人……それでも今、一緒に暮らしている人……
「助けて……ユウタ……」
彼女はその名前を呼んだ……たとえ彼と親しくなれば、また同じことが繰り返されるかもしれないとしても……
それでも彼女は彼の名前を呼んだ……
なぜ呼んでしまうのか分からなかった……でも、彼のことが頭から離れなかった……
「傘、いる?」
降り注いでいた雨がふと消えた……大きな影が彼女の視界を覆っていた……
シャーロットは上を見上げた……そこには、さっき自分が名前を呼んだ少年がいた……
「……エモ……くん」
「ごめん……大きい傘を買いに行ってたから遅くなって……」
ユウタは、さっき風で飛ばされたシャーロットの傘も一緒に持ってきていた……
「あなた……助けて……」
「……………え?」
「ううん……なんでもない……」
「それで……その抱えてるのって……」
シャーロットは布を開いてユウタに見せた……彼はそこに、上着の中で丸くなって眠っている猫を見つけた
「おお……猫か……にゃんにゃん」
彼が手を伸ばして撫でようとすると……すぐに猫に引っかかれた
「にゃあ!!!」
「痛っ!!……このバカ猫……」
彼は驚いて、ドタッと尻もちをついた……
「はっ……はは」
その様子を見たシャーロットは、思わずくすっとしてしまった……
「覚えてなさいよ……家に着いたら絶対お風呂に入れてやるからな……」
「はは……はははは」
ユウタの様子を見たシャーロットは、思わず声を上げて笑ってしまった……ユウタは驚きながらも、一緒になって笑った……
「ただいま帰りましたぁ……」
「ただいま帰りました……」
「おかえりなさ……え!!びしょ濡れじゃないの……どうして雨に打たれてきたのよ……」
「それが……その……」
彼女は上着を開いて母親に見せた
「にゃあ!!」
「あら猫ちゃん!!どこで見つけたの?」
アメリアはすぐに猫を抱き上げた……猫もそれが気に入ったようだった……
「道端に捨てられてたんです……それで見つけて……あと、この子は女の子だから、優しくしてあげてくださいね……」
「あら……じゃあ一緒にお風呂に入れてあげましょうか……」
「お母さん……私もう大人なんですよ……お母さんと一緒にお風呂なんて、子供の頃だけですよ……」
「いいじゃない……恥ずかしがることないでしょ……さあ、早く……」
アメリアはすぐに娘の手を引いてお風呂へ連れて行った……
「ユウくんも、一緒にお風呂入る?」
「いいんですか!!!あ……えっと……いや……え?」
「お母さん!!早くお湯の準備してよ……」
「あなたって本当に気分屋よね……さっきまで機嫌良かったのに……はぁ、お母さん困っちゃう……」
「それ誰のせいだと思ってるの……」
女性陣はお風呂へ向かった……
「賑やかでいいなぁ……この家族……」
「うちもこんな家族だったらいいのにな……」
「エモくん……お湯、用意できたよ……」
一時間ほど経って……彼女はユウタをお風呂に呼びに来た……
「うん……ありがとう……それで、あの猫は……」
「セバスチャンのこと?お母さんが毛を乾かしてあげてるよ」
「それ、猫の名前なの……」
「うちの母、ああ見えて筋金入りの猫好きなんだよね……」
彼女はちらっとユウタを見た……
「何?」
「ううん、何でもない……ほら!早くお風呂入っておいで……風邪引いちゃうよ……」
「うん……」
ユウタはタオルを手に取り、部屋を出ようとした……でもふと振り返ってシャーロットの方を向いた
「なあ……宮島」
「何?」
「何かあったら、いつでも言ってよ……」
シャーロットは彼の顔を見つめた……ユウタの表情はとても真剣だった……
「……うん、ありがとねエモくん……」
「あなたって本当に優しいね……」
彼女は彼に微笑みかけると……自分の部屋へ戻っていった……
「何かあったら、あなたに相談するね……」
そう言って、彼女はドアを閉めた……
「……いつでもどうぞ……」
誰かに心を開くことって、実はそんなに難しいことじゃないんだよ、チャルちゃん。




