52:ぜひ一度、なってみたいんですよね……VTuberに。
053
9月24日……夕方……雨は相変わらず降り続いていた……
「はぁ……雨が降るたびに気が滅入るなぁ……」
ユウタは両手いっぱいに荷物の入った袋を持ちながら歩いていた……サンシャイン池袋の通りで
「そう?……でも私は雨、好きだよ……」
「そうなんだ?……」
今日、ユウタとシャーロットは母親から夕食の材料を買ってくるよう頼まれていた……彼女がうっかり眠ってしまい、買い物に行きそびれたからだ……
誰が見ても、このいたずら好きな母親が、娘を声を作る機械を作った青年と一緒に出かけさせたいだけだということは分かりきっていた……声を出せない少女のために……
「なんていうか……雨が降っている時って……全部が穏やかに見えるのに、騒がしくもあるんだよね……」
「全然理解できないんだけど……」
「私も適当に言っただけだよ……」
ユウタが言う通り、何が言いたいのか全く理解できないことかもしれない……
でもシャーロットが言った、穏やかなのに騒がしいという言葉は……彼女が決して忘れることのできないものだった……
その日……彼女がすべての感覚を永遠に失った日……
親友が自分の元カレと関係を持っている光景は、今でも彼女の目に焼き付いている……
少女は拳を強く握りしめながら、雨に打たれる高いビルを見上げた……
灰色の空はどんよりと沈んでいた……あの日と同じように……
「ねぇ……宮島……」
「ん?……」
「……あと数日で、あなたの家を出ることになるんだよね……」
「そうだね……あと三日……か……」
二人はカフェの前で雨宿りをしていた……雨は止む気配もなく……仕方なく時間つぶしに話をしていた……
「……あのさ……うちの母が、あなたにもっと残ってほしいらしくて」
「はは……君のお母さん、可愛いね……君が寂しがると思ってるのかな?」
「寂しい?……私が……母と二人暮らしで寂しいことなんて全然ないよ……大学の友達もいるし……寂しいわけないでしょ……」
「そうだよね……」
次に何を話せばいいか分からなかった……
この二週間、毎日顔を合わせていたのは確かだけど……いざ話すとなると本当に大変だった……
仕方ないよな……美人な女の子に家に来てって誘われたんだから……たとえ一時的でも……
「それで……えっと……仕事の方はどう?……」
ユウタは頭と勇気を振り絞って聞いているようだった……
「まあまあかな……なんとかやってるよ……」
「君は?」
彼女が聞き返した……表情を変えずに……
「まあ……アキトさんの仕事は順調だよ……だから……もし卒業したら、彼と一緒に働こうかなって……」
「へぇ……あなたって……そう言えばテクノロジー系のことも得意なんだね……」
「ああ……まあね……」
シャーロットは二週間前に見た、ブレスレットのような形をした機械のことを思い出した……
「あ、そうだ……この前見た、ブレスレットみたいな見た目のあれ……あれって何なの?……」
ユウタは話すべきかどうかしばらく考えたが……嘘をつくのが苦手なので結局話すことにした……
そこでユウタはホリカワ・ホリキタのデビュー配信をシャーロットに見せた……
「へぇ……つまりこの機械は……ずっと話せなかった人が、また話せるようになるのを助けるものなんだね……」
「うん……まあそんな感じ……」
彼女は本当に驚いた様子だった……その様子を見たユウタも少し緊張した……
「あなたって……本当にかっこいいね……」
「え……えっ……」
彼女は今……かっこいいって言ったのか?……
「すごいよ……どういう仕組みなの?」
「あ……ああ……えっと……この機械にはセンサーがついていて、その人の話す時の動きを検知できるんだ。発声、舌の動き、喉から出る音、こういったものが連動して動くんだよ……センサーが検知すると、それをスピーカーから言葉として出力するんだ……でも声はちょっとロボットっぽくなっちゃうし、バッテリーも一回の充電で五時間しか持たないんだけどね……」
彼女は瞬きもせずに彼を見つめていた……
「ご、ごめん、こういう話になるといつも止まらなくなっちゃって、はは……俺って結構うざいよね……」
「そんなことないよ……あなたがこの機械を作ったなんて本当にすごいことだよ……こんなことができる人なんて、そうそういないんだから……」
「……」
「あなたって本当にかっこいいよ……」
「そう……かな……」
[かわいい!!かわいすぎる……この子……]
「そう言えば……あなたがVTuberチームのスタッフとして働いてるなんて初めて知ったよ……しかもシャクちゃんとララちゃんがいるヘレナミスティックのチームにいるなんてね」
ユウタはその言葉に驚いた……
「シャクちゃんとララちゃんのこと知ってるの?」
「知ってるよ……私、彼女たちのファンなんだ。結構よくスパチャもしてるし……」
彼女はユウタにYouTubeのアカウントを見せた。一般視聴者アカウントで、名前は……アビゲイル・エブリン……
「なんていうか……びっくりしたよ……」
「正直言うと……あの二人、本当にすごいんだよね……見てるだけでどれだけ輝いてるか分かるくらい……時々思っちゃうんだ……ああやって輝けたらいいのになって……」
「……」
「ホリキタちゃんの話を聞いてたら、思い出したんだ……一度やってみたいと思ってたことを……」
「やってみたいこと……?」
「うん……私さ……なってみたいんだよね……VTuberに」
彼女はユウタに甘い笑顔を向けた……彼はその場に立ち尽くしたまま……
「……」
ついに、その過去を描くことに最も気が進まなかったキャラクターの章にたどり着きました。正直なところ、チャーちゃんの経歴は極めて複雑であり、何よりも過酷なものです。とはいえ、VTuberシリーズが完結した暁には「西尾」シリーズを執筆するつもりでおり、その中でチャーちゃんの小・高校時代の物語も描く予定です。




