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ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。  作者: Sakusaku
ARC 3:VTuberになりたい声なき少女 — ホリカワ ・ ホリキタ

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38/66

38: 訓練場周辺をうろついていた。

 039


「ここが……ユリカちゃんの武道場ってやつか……」


 せっかくの休日だし、いろんなところに遊びに行こうと子どもたちは言っていたが……三十路が近い俺たちにはそこまで気力はなかった……それはそうと、あまり運動していない俺は最近腰が痛くなってきていて、もうほんとにめちゃくちゃ痛いんだが……


「榎本武道場……ネットで見たことはあったけど、まさか江戸時代から続いてるとは知らなかったな……」


 ユリカちゃんが俺たちを出迎えてくれた


「ようこそいらっしゃいました!皆さんはお客様です……どうぞくつろいでいってください……」


 彼女は厚紙のボードを持って見せてきた……


 そしてしばらく俺たちを眺めてから、またボードに書いた


「他の皆さんは?」


 今日来たのは少人数で……俺とルリちゃん、それからサちゃんだけだった


「今日は……ハルくんが……家の手伝いが……あって……マユリちゃんと……アキラちゃんは……衣装の生地を……買いに行って……ユウタくんは……家で……勉強しないといけないって……」


「ふむ……」


 二人が話す時はだいたい手話でやり取りしていた……


 サちゃんが挨拶しに行った。右手を握って下に向け、少し頭を下げる……基本的な手話で「こんにちは」を表していた


「あ!」


 ユリカちゃんはサちゃんに会うたびに、必ず抱きついていた……サちゃんは自分の妹みたいだと言っていた


 ユリカちゃんは一人っ子で、妹がずっと欲しかったんだそうだ……


 この二人、ほんとに微笑ましいな


 俺も普通に挨拶した……最近は彼女と話せるよう手話を覚えようとしているのだが、彼女はいつも、自分のために苦労して覚えなくていいと言う……もちろん俺とサちゃんはそんなこと気にしないのだが


「今日は……武道というものを……ちょっと体験してみたくて……ね……」


「おお!」


 彼女は俺たち三人の手を引いて、道場の中へ連れて行ってくれた


 中は時代劇で見るような昔ながらの道場で……よく手入れされた木造の空間が広がっていた……中には小学生、ほとんどが女の子たちが大勢稽古に来ていた……


「外部の先生も雇ってるんだな……」


 そりゃそうだろ……榎本家でまともに指導できるのは、ユリカちゃんとお父さんだけだし……


 俺たちは道場の中へ進んだ……木製の人形がたくさん並んでいる部屋に案内された……生徒も大勢いた……


「わあ……雰囲気、完全に侍の時代じゃないですか……」


 サちゃんがそう言いながらカメラを取り出して写真を撮り始めた……


「誰か私と一緒に稽古してみる?」


 ユリカちゃんがボードに書いた。俺が手を挙げた


「おお!」


 彼女は手を叩き……角にある一部屋を指差した。「男性更衣室」とはっきり書かれた札がかかっていた。俺はそこへ向かった……


「おお……これが合気道の道着か……かっこいいな」


 着替え終わって稽古場の端で待っていると……ちょうどユリカちゃんも出てきた


「……」


 道着に着替えると、見た目が変わるだけでなく……空気まで変わっていた……


「えっと……今まで……武道の経験は……ありますか?……なんか……体つきが……しっかりしてるので……」


 彼女がボードに書いたので俺は答えた


「まあ……若い頃にいくつか危ない仕事をしてたんで……多少は格闘技の心得があるくらいですよ……」


「へえ……」


 するとルリちゃんが横から口を挟んできた……


「先輩はよく自慢する人なんです……あんまり真に受けないでください……」


 三人の女子がくすくすと笑った……


「では第一のルール。相手から目を離さないこと」


 俺は手を伸ばして、彼女の肩を掴もうとした……だがユリカちゃんは俺の手を掴んで、瞬時に手首を返した


 そのまま脚で俺の体を絡め取り、勢いよく床に叩き落とした……


「いてっ!!!」


「うわあ!!!」


 立ち上がろうとしたが起き上がれなかった……体がもう限界に来てるのかもしれない。痛い!!!


「はあ……これが……現実ってやつか……」


「これが……ちょっとだけ格闘技の心得がある人ね……」


「黙ってたって誰も何も言わないよ、ルリちゃん……」


 サちゃんがすぐ駆け寄って俺を支えて、水を渡してくれた


「大丈夫ですか、アキくん!!」


「……なんか……一発やられた瞬間に、廃工場でグスタフ一族の銃撃をくぐり抜けた時と……狂信的なテロリストが豪華客船を占拠して船底にヴァンパイア軍団がいた時のことが頭をよぎったんだが……」


「何言ってるか全然分からない。頭打ったからおかしくなったんじゃないですかアキくん……」


 ユリカちゃんが氷を当てた布を持ってきて俺の頭に当ててくれた……ほんとに痛い……


「ICUに担ぎ込んだ方がいい気がする……」


「そのセリフ、チャンネルのトップドネートの返し用に取っといた方がよくない?サキュバス娘ちゃん」


「あっ……まあ普通に使えそう。すみません先輩……」


「先月の仕返しの気か……」


 もう……あいつをいじるんじゃなかった! 因果応報って言葉の意味が、今日になってやっと身に染みた……


「じゃあ……さっきの技……教えて……もらえますか?」


「いいですよ……着替えて……ここに来てください……」


 ---


「はあ……武道って……覚えておいて損はないな……」


「全く……あんなに運動してなかったら、ユリカちゃんに反応できなくて当然だよ……」


「まあまあ……言い訳してるけど、本当は女の子に負けるのが恥ずかしかっただけじゃないですか?」


 こいつは……まだいじるのか……


「あー……認めるよ」


「ほら見て!別に恥ずかしくないじゃないですか。素直に言えばよかっただけじゃないですか……」


「おっ!」


 突然ユリカちゃんが道場から出てきた……


「え……あ……」


 彼女がまた手話をした……短くて簡単で、すぐに意味が分かった


 左腕を直角に立てて、右手を上げ……そして体をお辞儀させた


「ありがとう」という手話だった……


 俺たちも同じ動作を返した……

以前、女友達に投げ飛ばされたことがあって、ものすごく痛かった。

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