37:線香花火で遊ぼう…
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「わあ……きれいな色……」
「アキくん!!見て見て、ハートの形にできたよ、かわいくない!!」
「私のも見て!!」
「ハルくん!!五本同時はあぶなくない?」
「ははっ……余裕っすよ……ね、タカダさん」
「ほんとに気が小さいなあ、アキラちゃん……」
「やったことない……線香花火……幼稚園から……ずっと……」
「榎本さんの人生……なんか切ないですね……」
夕方、帰る前に……アキトたちのグループとシャルロットのグループが合流して線香花火をやっていた……
「よ……」
「あ……よ」
シャルロットが、一人寂しそうに線香花火をしていたユウタの隣に座った……
「あの……お昼のこと……ビンタしてごめんね」
「ああ!いいよ……俺も自分を抑えられなかったのが悪いんだから……」
ユウタはそう言い訳しながら、あの時のことを頭から追い出そうとした……
「ありがとう……」
「何が?」
彼女はまだ火をつけていない線香花火を眺めてから、一本手に取って火をつけた
「私のお客さんでいてくれることへのお礼だよ」
ユウタは心の中で考えた……これって、仕事が終わった後の普通のお礼ってやつなのか?
「なんで?」
「だって……リピートしてくれるお客さんって全然いなくてさ……何回も借りてくれたのって、あなたが初めてなんだよね……」
「そんなこと……別にお礼なんて言わなくていいのに……」
変わった子だな……ユウタはそう思ったが、まだ知らなかった。この女の子がどんな人間で、過去にどんなことがあったのかを
「そっか……なんか変なこと言ってごめん……」
「……正直言うと……同い年くらいだと思ってたのに……実は6歳も違うんだね……」
「……そうなの?」
「なんか……あなって……若く見えるっていうか……その……かわいいっていうか……高校生みたいだから……」
シャルロットはユウタの様子を見て笑った
「あはは、可愛いって言いたいだけなのに……そんなに遠回しにしなくていいんだよ?」
どうやらバレたらしい……ユウタはただ頷いた……
「エモくん、かわいいな……」
「っ……」
いじられたユウタは話題を変えた……
「それで……宮島さんってアキトさんと知り合いなの?……一緒に話してたみたいだけど……」
「……まあ……そんな感じ……」
少し間を置いてから彼女は答えた……
「……」
答えたくなさそうだった……先輩でもありバイトを紹介してくれた雇い主でもあるアキトが、決して人柄のいい人間ではないことは、ユウタも認めざるを得なかった。つまり
「何かされたの?……」
「は?」
「なんか……あなた、あまり彼と話したがってないみたいだったから……」
「え……エモくん……」
「分かるよ……あの人って別にいい人ってわけじゃないし……なんか胡散臭い感じもするし……」
気づいたら自分の上司の悪口を言っていた……
「そんなことないよ……悪いことなんてしてない……」
「そうなの?……」
少し顔が青ざめた……そして心の中で罪悪感を覚えた
「ははっ」
彼女はまた笑った……
「あなたって面白いね……」
彼女が笑顔を見せた……それはかなり珍しいことだった……
「実はアキトさんって助けてくれた人でさ……ずっといろいろ教えてくれてたんだよね……」
「ちゃんと謝りに行かないとだな……マジで……」
二人は線香花火をしながら、他愛のない話を続けた……
「ところで……なんで私を借りようと思ったの?」
そう聞かれて、ユウタは正直に答えた
「お母さんの愚痴を聞くのが嫌になってさ……あなたを借りたら忘れられると思って……」
「……お母さんと仲良くないの?」
「全然合わないんだよね……お母さんって古い考え方の人で、子供に高い期待をかけて近所に自慢したいタイプ……笑えるよな……」
「……」
「だからそういうのを全部頭から消せる場所が欲しくてさ……それで彼らと出会って……」
ユウタはアキトたちのグループが楽しそうに線香花火をしているのを眺めた……
「それに……あなたも……」
「……」
「ね?……あの日あなたを借りてから……ずいぶん気持ちが楽になったんだよ……」
「あんなにわがままだったのに?」
「それがあなたのキャラだからさ……」
「私とは全然違うね……」
「……あなたはお母さんと仲いいの?」
「お母さんだけが、残った家族なんだよね……」
「そうなんだ……じゃあ……あなたの仕事のことって、お母さんは知ってるの?」
シャルロットは首を横に振った……
「……そうだよね……こういう仕事って、いい目で見てくれる人なんていないし……あ!でも私はあなたのことを悪く思ってないからね」
「うん……ありがとう……」
彼女はちらりとユウタを見た……そして幼い頃、写真を撮るのが好きだったある少年のことを思い出した……
この子って……シンジくんに似てるな……
素直で……優しい性格で……
「ほんとに私ってバカだな……」
「ん?……」
「ううん……なんでもない……なんか独り言が出ちゃっただけ」
「そっか……」
少し話したところで……アキトが声をかけてきた。ちょうどその時、線香花火の火も落ちた
「帰ろうか……」
ユウタが手を差し出すと、シャルロットはその手を掴んで立ち上がった……
「うん……」
「ちょっと……二人でこそこそ何を話してたのかなあ、この肉食系女子め」
「黙ってて……私たちそういうんじゃないから……」
「えー、この背中の曲がった男の子のこと好きかと思ったのに……」
女子大生たちにそう言われてユウタは固まった。少しだけシャルロットの顔をちらりと見た
シャルロットは自分の気持ちを少し整理してから……表情を落ち着けて答えた。でも少し照れている様子で……
「好きってわけじゃないけど……嫌いでもない……」
それを聞いた女子大生たちは一斉にシャルロットに飛びついた……
「シャルちゃんかわいすぎっ!!!!」
「男の子もかわいいじゃーーーん!!」
「え、ちょっと待ってください!」
女子大生たちはユウタも引っ張って抱きついた……シャルロットとユウタは顔を見合わせて、乾いた笑いを漏らした
「くっそ……羨ましすぎるだろあいつ……」
アキトがぼやいた……そして言わずもがな、また股間を蹴られていた……
サメちゃんはといえば……私がいるじゃないですか、それだけで世界中の人に羨ましがられてますよ、と言っていた
楽しいひとときだった……
暗くなってきた頃……アキトが女子大生たちを車で家まで送ると申し出た……
最初は女子たちも遠慮していた。トヨタ・アルファード(あの菅原から借りたやつ……)で来ているのを見て気を使ったのだが、アキトは夜道は危ないからと言って、結局みんな一緒に乗って帰ることになった……
帰り道、全員が眠ってしまった……アキトを除いて……だから彼はその機会を利用して、静かに音楽を流して車内の人たちをそっと眠りへ誘った……
「……懐かしくて……でも前とは違う……いつもの景色……」
「今日は本当に楽しかったな……」
人は誰しも孤独な時に誰かにそばにいてほしいと願うものだが、ユウタもまさにその一人だ。私もこれまで何度もそばにいてくれる人を探そうとしてきたけれど、いつも失敗に終わってきた。だから、密かにユウタを応援していて、チャールズとの関係がうまくいくことを願っている。




