107 :青山アキト 第8話
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「美味しいです」
ソファに上がるのも一苦労な小さな女の子が、とても愛らしかった
小さな手と、チーズケーキを口に運ぶ小さくて柔らかい口がとても可愛かった....
僕は女の子の様子に口元をほんの少しだけ緩めた
「気に入ってくれて嬉しいよ」
僕はテレビのバラエティのドッキリ番組をつけてあげた......
「あはは!」
気に入ったみたいだ
「それで...お母さんと遊びに来たの?」
僕は彼女の隣に座った.....美冬ちゃんは首を横に振った
「分かりません.....突然、お兄ちゃんに会わせたいってお母さんが言ったんです」
「それで...おうちはどこなの?」
「お母さんは秋田だって言ってました」
秋田から来たのか?.....本当に、どうしてそんなに遠くから来る必要があるんだ、近場の観光地もたくさんあるのに それとも用事があると言っていたのは東京での用事のことなのか
何なんだ....待ってくれ...嫌だ....
お願いだから、僕が考えている通りじゃありませんように
「それで...お父さんは?」
彼女は首を振った....そして短く答えた
「分かりません」
分からない?....どうして...意味が分からない
聞けば聞くほど悪くなる....この話はもう聞かない方がいい
番組を見ている間に、二年前にオープンした水族館のCMが流れ始めた
「水族館....って、何ですか?」
美冬ちゃんは水族館に目を奪われているようだった....すごく行きたそうに見えた
「えっと...水の中の生き物を近くで見られる場所だよ」
彼女はそのCMをじっと見つめていた....
「わあ......あっ! あれは何ですか、可愛い」
彼女は魚を食べて拍手しているイルカを指差した....それだけじゃなくペンギンもいた
「...................」
僕は彼女の顔を愛おしく見つめた.....そして彼女の頭を軽く撫でて、着替えに二階の部屋へ上がった
どうせ出かけるなら...ちょっとはかっこよく決めよう
「お兄ちゃん....どこに行くんですか?」
「どこって、水族館だよ」
それを聞いた彼女は目を輝かせて、嬉しそうに走ってきて僕に抱きついた その明るい様子を見て、僕はものすごくいい気分になった
財布の覚悟はもうしていた...でもまあいい...一日だけならきっと大丈夫
言った通り、僕はお金を稼ぐために双葉お嬢様の下で働いていた...収入はそれなりにあった
でも弁護士のお姉さんが資産を管理してくれるようになってからは、自由にお金を使うことはあまりできなかった、だってみんなも知っての通り、僕のしている仕事はあまりまっとうな仕事じゃないから
しかも数ヶ月後には福岡で二、三ヶ月仕事をしなければいけない....心が疲れるだけじゃなく体まで疲れる
そして僕は稼いだお金で、二人乗りできる小さなスクーターを買った
僕の学校は運転免許を取ることは許可していたけど、学校に乗ってくるのは相変わらず禁止だった、だからこのスクーターには問題なく乗れた
「お兄ちゃんは運転できるんですか?」
「うん...あまり乗らないけどね でも今日は子供を連れて遊びに行くんだし、さあ行こう!」
僕は彼女を抱き上げて前に座らせた.....そして水族館までスクーターを走らせた.....
道中、彼女は東京の街を興奮して左右に見回していた
「お兄ちゃん! ビルがすごく高い!」
「でしょ!? あれ見て」
「わあ....すごいです」
彼女の表情は人生で一番幸せそうだった...見ているとほっとした
そしてついに水族館に着いた....妹はほとんど走って入ろうとした.....僕がチケットを買っている間、彼女は狂ったように跳ね回っていて、チケット売り場のお姉さんたちは微笑ましく彼女を見ていた
「さあ行こう...おい! 走るなって!!」
トンネル水槽のところに入ると彼女は目をキラキラさせた、本当に、秋田にはないのか?
「お兄ちゃん! すごく大きな魚!」
美冬ちゃんは一匹のサメを指差した....僕はその可愛さに首を振った
「写真撮ろうか?」
僕は携帯を取り出した...彼女は大きなサメの隣に走っていった......僕は安全のためフラッシュを切った(僕の携帯は双葉お嬢様が買ってくれたもので、仕事で使えるようにフラッシュ機能が外されている) 彼女は歯を見せて楽しそうに笑っていた....
撮り終わるとすぐに別の魚を見に歩いていった
ダイバーさんを見つけると手を振って挨拶して...彼も思わず手を振り返してくれた....可愛い瞬間だった
{お客様にお知らせいたします...ただいまイルカショー、エイタくんとラミちゃんのショーが十五分後に始まります.....}
「お兄ちゃん早く行こう!」
小さな美冬は急いで僕の手を引っ張ってイルカショーを見に行こうとした
「おい! ちょっと待って」
間に合わなかった......幼い女の子が高校生を水族館中引きずり回している光景は、すでに人々の目に晒されていた
着くと彼女は最前列の席に僕を連れていった、絶対に水を被る席だ
「えっと...他の場所じゃだめ?」
「やだ...エイタくんとラミちゃんを近くで見たいの」
わがままだな...まあいいか
僕は携帯を防水ケースに入れてしっかり持っていた.......
「携帯しまっちゃだめ 私お兄ちゃんに撮ってほしいの」
あの二人を?本気か
{それでは皆様...始めましょう}
司会のお姉さんが言って....ショーが始まった......二頭のイルカがこんなに上手に芸をするなんて驚いた
{さあ...二頭は空中の輪をくぐれるでしょうか?}
その瞬間二頭のイルカは交互に美しく輪をくぐり抜けた...
飼育員さんがイルカに魚を投げてあげて、イルカは拍手した
「すごーい!! お兄ちゃん、見て見て」
美冬は手が痛くならないか心配になるほど拍手していた...
そして....僕が待ちたくなかった瞬間がやってきた
まるで分かっているかのように...高くジャンプして、ドボン!
大きな波が僕の顔に直撃した
「きゃー! あはは」
美冬ちゃんは大喜びで笑っていたけど、僕は全然嬉しくなかった、まったく
僕のお気に入りの白いシャツが...うう..
でもシャツが濡れたって
「お兄ちゃんさっきの顔すごかった あはははは」
彼女が楽しそうなのを見られて僕も嬉しい
一日一緒に過ごして......僕は少しだけ、妹が一人いたらいいなと思った...
急に妹が欲しくなったからじゃない、ただ、一人でいたくなかっただけだった
でもまあ...どうせ今日が会える最後の日だ.....少なくとも、僕があまり寂しさを感じなかったもう一日になった
帰りはペンギンを見に行くつもりだったけど帰ることにした、彼女が疲れて眠ってしまったから、濡れたままの姿で家に帰った
家に着くと彼女を抱いて体を拭いてあげて、着替えさせた(僕が子供の頃の服) そして僕の部屋で眠らせておいた
お母さんが迎えに来るのを待つ間
待って....待ち続けた
夕方六時...僕は夕飯を買いに出かけた...戻ってきてもまだ保護者が迎えに来る気配はなかった
やめてくれ....嫌だ 僕が考えている通りになりませんように
お願いだから.....このことだけは、僕の考えが現実にならないでくれ
「お兄ちゃん....お母さんもう来た?」
八歳の女の子の何気ない質問....もちろんまだ一日も終わっていない....きっとお母さんは地方の人だから東京の電車の乗り方が分からないのかもしれない
「お母さんは道に迷ったのかも 東京ってそういうところだからね」
「そうですか?.....アニメ見てもいいですか?」
「ああ...もちろん!」
僕は魔法少女アニメをつけて彼女に見せながら夕飯を作った.....二人分の食材を買っておいてよかった...客がいる状態で夕飯を作るのも初めてだった
僕ら二人はただお母さんがいつ迎えに来るのか待ち続けた
夕飯を食べ終わって暗くなっても....家の前で誰かがチャイムを押す気配は少しもなかった
その時僕はただ祈っていた...どうか彼女のお母さんが迎えに来ますようにと
でもどれだけ長く待っても....来なかった...
アニメが終わった....何本も見たのにお母さんはまだ迎えに来ない
「..........お母さんは....私を捨てたんです」
「そんなことないよ美冬ちゃん...お母さんはきっと」
「違います!......お母さんはもう私のこと好きじゃないんです.....迎えに来るなら....もう来てるはずです....」
少女の頬に涙が伝い始めた.....どうすればいいか分からなかった僕は、頭を撫でて慰めることしかできなかった
「明日まで待ってみよう.....たった一日だけだよ...ね」
それを聞いた美冬は頷いて理解した.....そして僕の腕の中に入ってきた
もちろんまだ断定はできなかったけど...僕は良い方向に考えることにした...待ち続ければ、お母さんはきっと迎えに来ると
一日待って、三日待って、一週間待って....一ヶ月が経ってもお母さんは戻ってこなかった
結局......僕は望み通りに妹ができた.....でも今の僕の妹は...ずっとお母さんを思って泣いているだけだった
頑張ったけど...もう本当に無理だった
いつだって誰もが僕らを容赦なく見捨てていく......
僕は何をしていても彼女を抱きしめていた....彼女にもう二度と見捨てられる思いをさせたくなかったから
アキと冬はずっと一緒
捨てられた二人の兄妹.....それでも僕は持っているすべての愛を妹に注ぎ続けると決意した
僕に残された、たった一人の家族




