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0005. 狐火ちゃんがどこかに消えた

「幻獣とのよい冒険を、BonVoyage!」


後ろから、この先の冒険を祝福してくれているファイ0027の声を聞きながら、私は光の扉を開けて八百幻の世界に飛び込んでいった。


「さぁ、狐火ちゃん、一緒に行こう!楽しく一緒に生活しよう!」


一瞬、目の前が真っ白になって目を閉じてしまったが、ゆっくりと目を開けてみる。

そこは、少し小高い丘の上だった。

(――ふぁあぁ……!)

(BGM:『消えたモフモフ!?〜城塞都市へ急げ!〜』開始)

※脳内には、眼下に広がる城塞都市の壮大な街並みを見下ろす景観にふさわしい、

広がりのある美しいストリングスとフルートの旋律が響き渡る。

希望に満ちたゆったりとしたワルツの調べだ。


眼下に広がるのは、白妙の城塞都市。


中世ヨーロッパ風の多層円形城塞でありながら、外壁の土台には立派な日本の城石垣(穴太積み)が使われている。レンガ造りの洋館に瓦葺きの屋根が並び、本当に北欧神話と日本神話が混ざり合った「和洋折衷」の極みのような絶景だ。


他の国の建築物も、各神話をベースにしているんだろうか。

これは、いろんな国に行くのが本当に楽しみになる。


丘の上から見る限り、街の規模はかなり大きく、数万人は住んでいそうだ。

「サーバー分けとかどうなってるのかな?」なんて、つい仕事っぽいことを考えてしまったけれど、ここは【八百万の幻獣物語】の世界。そんな無粋な事は横に置いておくのが正解だね。


ちらほら、周りにも同じようにログインしてきたプレイヤーが出現し始めた。出遅れ禁止だよ。

さぁ、記念すべき冒険の旅立ち。第一歩は右足から?それとも左足から?


「ええぃ、いいやぁ!ここはジャンプで行こう!せいのっ、と!」


私は元気よく、城塞都市へと続く道へ飛び出した。

さあ、行こう、狐火ちゃ……


ん?


(ピタッ)

(BGM:音楽が急停止。ピチカートやファゴット、コミカルな三味線が「えっ?えっ?」と戸惑うような変拍子でバタバタと鳴り響く)


狐火ちゃんはどこだぁ~!?


慌てて周囲を見渡すが、私の足元にも、肩の上にもいない。

他のプレイヤーは幻獣を足元に連れていたり、抱っこしたりしているのに、うちの狐火ちゃんの姿だけがどこにもない!

(ベン、ベンッ、ベンベンベン……!)


頭の中で、焦りを煽るような三味線とピチカート(弦を弾く音)の変拍子がバタバタと鳴り響く。

ウソでしょ、置いてきちゃったの!?ちょっと頭が真っ白になってパニックを起こしかけた、その時だった。


『ティロリン♪』

(BGM:ホッとした胸を撫で下ろすような、柔らかいハープと琴の音色が流れ始める)

目の前に、新着メッセージのポップアップが表示された。

まさか何かの不具合?それとも幻獣抽選が間違いだったの!?周りから「1人でキョロキョロしてる怪しいヤツ」と見られながらも、私は心臓をバクバク言わせてメッセージを開いた。


【緊急のお知らせ:SR以上の幻獣を仲間にされた皆様へ】

急なご連絡を致しまして申し訳ございません。

ある国のSR幻獣保持者の方が、冒険者ギルド内でご自身の幻獣を自慢し、周りの方の幻獣を蔑む発言をされたことから大乱闘となり、ギルド建物の倒壊、町の一部が半倒壊という事態が発生いたしました。


つきましては、事態の収拾と本人確認のため、皆様の幻獣は『一時的に非召喚状態』に強制設定させていただきました。

召喚を再開する場合、今回に限り、冒険者ギルドでのご連絡・ご報告が必要となります。

ご迷惑をおかけしますが、ご理解をお願い申し上げます。


(ポロロロン……♪)


あぁ〜〜〜、よかったぁ……!不具合でも取り上げられたわけでもなく、私の狐火ちゃんは無事だったのね。


……って。


「おぉ〜〜、なんちゅうことをしてくれてるんじゃぁ!!」


安堵した直後、怒りがフツフツと湧いてきた。

よりによってサービス開始直後に街を半壊させる大乱闘って!迷惑かけたヤツのことはどうでもいいけれど、そのせいで私の「狐火ちゃんとのスローライフ第一歩」が邪魔されたのだ。ホント余計なことをしやがって!


(BGM:軽快なスネアドラムがマーチのリズムを刻み始め、足早に街を歩くような軽快でポップなテンポへチェンジする)

(タタタン、タタタン、タタタタタタタン!)


私の脳内で、軽快なスネアドラムがマーチ(行進曲)のリズムを刻み始めた。


冒険者ギルドに行って手続きすれば召喚できるなら、とっととギルドに行くしかない!いつまでも狐火ちゃんを待たせるわけにはいかないし、何より……私の方が、もう待ちきれない!


「待っててね、狐火ちゃん!すぐに『おむかえ』に行くからね!」


私はワクワク感全開で、ハイカラな城塞都市へと続く道を、一直線に駆け出した!


一刻も早く会いたいという一心で駆け抜ける私の視界には、驚くほど鮮明に街の様子が飛び込んできた。


堅牢な穴太積みの石垣に支えられた重厚な土台、ガス灯と行灯が並ぶ大正ロマン風の街路、そして瓦屋根の隙間から立ち上る生活の気配。門付近の混雑も、まるで見えない道筋を辿るように淀みなくすり抜けていく。


この時の私の足取りは、ログインから街の入り口の混雑を抜け、

余所見もせず一直線にギルド支部へ到達するまで「現実時間にしてわずか40分」という最短最速の移動だった。

再会を急ぐあまり一切の無駄を排したその動きが、後に掲示板で『サービス開始直後の特定の時間帯にSSR排出の乱数の偏りがあることを見抜いていた廃人のタイムアタック』と戦慄されることなど、知る由もなかったのである。

琴音が戦国時代に転生してスローライフを目指して生き抜く話を週3回、月曜、水曜、金曜と投稿しています。こちらの作品も楽しんでもらえればと思います。


戦国幻獣物語 〜目指せ、戦国ひきこもりモフモフ生活! 八百万の幻獣をモフって今日も生き抜くぞ、おぉーーっ!〜

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