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【改稿版】八百万の幻獣物語 〜「ただモフモフしたいだけなんです!」愛とスキルを『モフモフ』に注ぎ込んだ戦闘力ゼロの社畜OL。懐かれすぎた神獣とのスローライフの裏で、今日もギルドが胃痛で泣いています〜  作者: 蒼葵美
【第5章】 愛着のオーバーフロー:生産ギルド編

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0045. 材料確認で少し混乱を

「……いい、琴音さん。まずは深呼吸して。今、この部屋で一番混乱しているのは私の方なんだから」


生産ギルドの特級調合室。アンネさんは真っ白な顔で、震える手で分厚い台帳に向かって特製の羽根ペンを構えていた。

虹光の零位プリズム・ゼロの正式登録にあたり、ギルドの専用倉庫に預ける素材の「資産価値」を記録しなければならないのだが、その作業が始まって数分で、主任である彼女の優秀な事務処理能力は完全に限界を迎えようとしていた。


(BGM:『整理不能のインベントリ 〜不規則なスネア音〜』開始)

※バラバラと崩れ落ちる荷物の山を連想させる、予測不能で不規則なスネアドラムの乾いた音色。整理整頓という概念を嘲笑うかのようにリズムが跳ね、貴重な素材と日用品が入り混じったカオスなインベントリの中身に、プロの調合師たちが処理落ち(混乱)していく様子をコミカルに描き出すジャズ・パーカッション


「さて、まずは……この騒ぎの元凶になった、これね」


アンネさんが防魔手袋を何重にもはめた手で、机の中央に鎮座する『虹晶こうしょうスライムの神核』を指差した。


「ええ。これ、とっても綺麗だったので、ギルドに預けておけば安心かなって思って。……あ、でも、せっかく虹光の零位になれたんだし、いつかまた狐火ちゃんに似合う『いいもの』に加工できたらいいなーって思っています!」


「……『加工できたらいいな』のレベルじゃないわよ。この魔圧のせいで、さっきから私の持ってる魔力計測器がパチパチ火花を吹いてエラーを吐き続けているのよ。……はい、一点目。名称不明・虹晶神核。ランク……測定不能(神話級)。次、次を出しなさい」


アンネさんが半泣きで台帳に書き込むのを見て、私は「ギルドの人って大変だなぁ」と思いながら、インベントリの隅っこをガサゴソと探って、小さな小瓶や包みを机の上に無造作に取り出した。


「あとは……これくらいかな? 先日のアクセサリー作製で余っちゃった、『翡翠ひすいの魔石の破片』です。バルガスさんが『好きにしろ』って言ったので、とりあえず取っておいたんですけど」


「……は?」


アンネさんが恐る恐る受け取ったのは、小指の先ほどの小さな欠片だった。だが、それは一切の不純物がない、極限の純度を誇る翡翠色に輝いていた。


「これ……『破片』って言った? 不純物ゼロの最高純度翡翠……。これ一つだけでも、宮廷魔導師が使う高級な杖のメイン触媒になるわよ。……これが『余りもの』なの?」


「はい。あ、あと、これもほんの少しだけ残っていました。『王の雫(定着液)』です。瓶の底にこびりついていたのを一生懸命集めたんですけど……まだ使えますか?」


私は、ほんの数滴だけ液体が残った小さな薬瓶をコトンと置いた。


「……森のヌシの、王の雫……。……琴音さん、あなた、さっきから伝説級の素材を『残りカス』みたいに紹介しているけれど、自覚はあるの?」


「えぇー……。だって、本当に少しだけですよ? あと、もうほとんど空っぽなんですけど、この間若菜さんに渡した『広場のごみの灰』も、粉末がほんの少しだけ残っていて。……これ、お掃除して捨てたほうがいいですか?」


「掃除しないで!! 捨てないで!! その粉末一粒で、魔導師が狂喜乱舞するレベルの灰なのよ!!」


私が指先についたキラキラ光る粉を払おうとした瞬間、アンネさんが悲鳴を上げて私の手を両手で包み込んだ。


【System Warning:Appraisal Confusion(インベントリ内の価値査定に深刻なバグが発生中)】

【Error Reason:Scraps vs. National Treasures(『ゴミ・端材』と『国家指定遺物』の概念の矛盾)】

【Status:Data Overflow(ギルドの台帳処理能力が限界を突破しました)】


アンネさんは、ついに羽根ペンをへし折り、机に突っ伏した。

彼女の目の前には、虹色に輝く巨大な神核と、その周りに無造作に並べられた「伝説の端材(残りカス)」たち。


「……琴音さん。あなたがただ『拾った綺麗な石』や『お片付けのゴミ』を登録しに来ただけなのは、もう痛いほど分かったわ。でもね、ギルドとしては、この『残りカス』たちだけでも、国軍を配備して厳重に管理しなきゃいけないレベルなの。……頭がおかしくなりそう。最高純度の翡翠の欠片に、王の雫の数滴、そして神聖な灰の粉末……。こんな豪華すぎる『ゴミ』、歴史上のどの英雄のインベントリにも載ってないわよ!!」


「えー……。生産ギルドって、お掃除のホコリや端材の管理にも結構厳しいんですねぇ。……狐火ちゃん、私たち、ちょっと面倒なところに来ちゃったかしら?」


「クゥーン(……アンネのキャパが低いだけだぞ)」


私は、アンネさんの魂からの叫びを「プロの整理整頓へのこだわり」だと完全に勘違いしながら、指先に残った最後の一粒の灰をどうやって瓶に戻そうか、のんびりと考えるのだった。

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