↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版】八百万の幻獣物語 〜「ただモフモフしたいだけなんです!」愛とスキルを『モフモフ』に注ぎ込んだ戦闘力ゼロの社畜OL。懐かれすぎた神獣とのスローライフの裏で、今日もギルドが胃痛で泣いています〜  作者: 蒼葵美
【第4章】 愛着のオーバーフロー:魔導具製作編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/47

0040. 完成報告:若菜さん、またまた絶句する

「ただいま戻りました、若菜さん!」


六花のギルドに、私の明るい声が響く。

腕の中には、誇らしげに胸を張る狐火ちゃん。その首元には、バルガスさんの工房で完成したばかりの『古銀のネックレス』が、翡翠の魔石を抱いて上品に輝いている。

もちろん、私の左手首のブレスレット、両耳のピアス、指輪ともお揃いのデザインだ。そしてインベントリには、メインコアの勾玉と、究極のブラッシング用の銀の櫛が大切にしまってある。


(BGM:『凱旋の足取り〜スキップ混じりのワルツ〜』開始)

※三拍子の軽快なリズムに、木管楽器の明るい旋律。最高に可愛いグッズができた喜びと、早く若菜さんに見せたいという琴音のワクワクが弾けるような凱旋BGM。


「あら、琴音さん。……その様子だと、工房での作業は無事に終わったみたいね」


受付カウンターの奥で、若菜さんが少し疲れた顔で顔を上げた。その手元に「特濃の胃腸薬」の小瓶が常備されているのを、私は見逃さなかった。……最近、若菜さんお疲れなのかな?


「はい!見てください若菜さん!できました、狐火ちゃんとお揃いの『モフモフ・アラート付きお揃いフルオート・グッズ』です!」


「……モフモフ・アラート?」


若菜さんは眉をひそめながらも、私が差し出した左手首のブレスレットと、狐火ちゃんのネックレスを覗き込んだ。

「あら、デザインはとっても素敵ね。……でも、あの偏屈なバルガスがそんなに簡単に素人の依頼を受けるなんて……。一応、ギルドの規定通りに完成品の登録と簡易鑑定をさせてもらうわね」


若菜さんは、ギルド支給の高性能鑑定用ルーペを取り出した。

「ええ、お願いします!ちゃんと『お腹空いたのが分かる機能』とか付いてるんですよ!」


「はいはい……。どれどれ……」


若菜さんがルーペを覗き込み、まずは私の『ブレスレット』に魔力を通した。

……次の瞬間、若菜さんの動きが、石像のようにピタリと止まった。


(BGM:ワルツがレコードを止めたような音と共に消失。――『沈黙のギルド 〜秒針の音だけが響く〜』開始)

※全ての楽器が消え、ギルド内の喧騒さえも遠のく。ただ「チッ、チッ、チッ……」と無機質な秒針の音だけが響き渡る、圧倒的な静寂。誰もが息を呑み、鑑定結果という名の「絶望」を待つBGM。


「………………」


「……若菜さん?どうしました?やっぱり、お腹痛いんですか?」


「……琴音さん。ちょっと、奥の防音VIPブースへ行きましょうか。今すぐに。絶対に」


若菜さんは無言のまま(笑顔だが目が全く笑っていない)、私の腕をガシッと掴み、受付カウンターから飛び出して私を奥の個室へと引きずり込んだ。


ロビーに残された他の冒険者プレイヤーたちが、一斉にこちらを見てザワつき始める。

「おい、あのお姉さん、またVIPルーム(という名の取調室)に連行されたぞ……」

「この前、森を更地にして光る大根持ち込んだ人だろ?」

「今度は何をやらかしたんだ……また神殿騎士団が来る前に、ログアウトして逃げた方がよくないか?」


---


バタンッ!

VIPブースに入るなり、若菜さんは部屋の鍵をかけ、何重もの防音結界を張った。そして、部屋にある大型の特別鑑定盤に私の腕を乗せさせた。

ガシャン、と重厚な音がして、空中にホログラムのウィンドウが展開される。


【ItemName:常若の桜腕輪(絆の輪・端末)】

【Grade:MeasurementImpossible(測定不能/神話級)】

【Effect1:存在保障(お腹空きアラート)-魂の欠損・生命力低下を検知し即時修復】

【Effect2:精神感応モフモフ・テレパシー-対象との完全な思考・感情の同調】

【SetEffect:因果の絆(メインコア接続中)-全ステータスを因果レベルで強制保護】


「…………琴音さん」


若菜さんの声が、地を這うように低い。


「はい、なんですか?」


「……あなた、これを作るのに何を使ったの?翡翠の魔石と古銀、それに綿毛草わたげそう……あと、例の『神聖な灰(※国家最高機密)の虹色の溶媒』よね?」


「はい!あ、あと森の主さんが怪我してたのでポーションをあげたら、お礼に『王の雫』も少し貰えたので混ぜました!」


「……。………………。あのね、琴音さん。これ、何て書いてあるか読める?『魂の欠損を即時修復して、全ステータスを因果レベルで強制保護する』って書いてあるのよ。……これ一個で、隣国の精鋭騎士団を一人で無傷のまま壊滅させられるレベルの防具になってるんだけど。……どこが『便利な生活グッズ』なのよぉ!!」


若菜さんの悲鳴のような絶叫が、防音結界をビリビリと揺らした。


「えぇっ!?でも、狐火ちゃんのお腹空いたのを教えてくれるだけですよ?あ、あとついでに、お腹が空いたら光る機能も付けたんですよ。便利ですよね!」


「『お腹空いた』を検知するために、生命力と魂の深層までリンクして常に全回復状態になっちゃってるのよ!……もう嫌。あの大根の時もそうだったけど、あなた、どうしてこう……加減っていうものを知らないの……!」


若菜さんは、そのままズルズルとソファから滑り落ち、無言のまま、吸い込まれるようにテーブルの下へと沈んでいった。


「あ、あのー、若菜さん?まだ狐火ちゃんのネックレスとか、私のピアスとか指輪とか、あとインベントリに櫛と勾玉もあるんですけど……こっちも順番に鑑定しますか?」


私がインベントリを開きかけながら無邪気に尋ねると、テーブルの下から若菜さんの白い手だけがサッと伸びてきて、ヒラヒラと全力で振られた。


「……やめて。もう私の胃のHPはゼロよ」


「えっ、でもギルドの規定で……」


「これ以上そんな『歩く国家機密兵器群』を見せられたら、私がショック死するわ。……残りの凶器グッズの確認は、後日、ギルドマスターも交えて、ギルドの地下にある『対魔王用の絶対防壁結界』の中でやらせてちょうだい……」


「凶器じゃないですよ!?モフモフ・グッズです!」


「もういいから!受理したから!お願いだから、今日はそれを隠して、早く宿に帰ってちょうだい……!」


「はーい……。お大事にしてくださいね、若菜さん!」


私は首を傾げながらも、狐火ちゃんと一緒にギルドを後にした。

どうやら若菜さん、本当に胃の体調が悪いみたい。ギルドマスターさんまで出てくるなんて、魔導具の鑑定って大げさなんだなぁ。


明日、また何か栄養のあるものでも差し入れしようかな――そんな呑気なことを考えながら、私は新調したブレスレットの輝きに、幸せな気分で目を細めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。