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【改稿版】八百万の幻獣物語 〜「ただモフモフしたいだけなんです!」愛とスキルを『モフモフ』に注ぎ込んだ戦闘力ゼロの社畜OL。懐かれすぎた神獣とのスローライフの裏で、今日もギルドが胃痛で泣いています〜  作者: 蒼葵美
【第4章】 愛着のオーバーフロー:魔導具製作編

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0039. 初グッズカスタム! グッズマスター?

「……ふぅ、ハァ……。お嬢ちゃん、外枠の融合は完璧だ。だが、ここからが魔導具の『魂』を決める最終工程だ。お前の魔力で、この6つの遺物に望む『機能』を刻み込め」


バルガスさんは、精根尽き果てた様子で椅子に沈み込みながら、作業台で淡く光る6つのアイテムを指差した。


通常、ここでお仕着せの空中に浮かぶ半透明の『スキルツリー』から、「筋力増加」や「属性耐性」といった項目をポイント制で選ぶのが、このVRMMOにおける『カスタマイズ』だ。私の目の前にも、ズラリと戦闘用のスキル群が表示されている。


「機能、ですね……。はい、もう決まっています!」


私は目を閉じ、6つのアイテムに意識を集中させる。

私が欲しいのは、誰かを傷つけるためのステータスじゃない。現実世界で薙刀の全国優勝を果たしたあの頃のような、殺伐とした勝利のための道具でもない。


(私が欲しいのは、狐火ちゃんとのフワフワで幸せなスローライフ空間。……ただ、それだけ!)


私がそう強く願った瞬間、目の前の空中を埋め尽くしていた「標準スキルリスト」のウィンドウが、パラリンッ!と小気味良いガラスの割れる音と共に粉々に砕け散った。


「な……!? お嬢ちゃん、今度は何をした! 空中の魔力溜まり(※NPCから見たUIの表現)が一瞬で霧散しやがったぞ!」


「えっ? だって、あんなにたくさん『筋力UP』とか『炎耐性』とか文字があってもよく分からないし……。私が欲しいのは、こういう機能なんです!」


私がメインコアである勾玉を通じてイメージしたのは、具体的すぎるほどに「平和」で「モフモフ至上主義」な機能だった。


1. ネックレス(狐火ちゃん用): 常に毛並みをツヤツヤに保つ『自動毛繕い』と、どこにいても私の温もりを感じられる『安心バリア』。

2. ブレスレット(私用): 狐火ちゃんが「お腹空いた」「眠い」「甘えたい」と思った瞬間に私の腕に伝わる『モフモフ・テレパシー(お腹空きアラート付き)』。

3. 指輪・ピアス(私用): お互いの距離が離れたら優しく光る『迷子防止』と、冬でも夏でも抱っこが快適な『パーソナル自動温度調整』。

4. 銀の櫛: 撫でるだけで狐火ちゃんがうっとりする『極上リラックスマッサージ効果』。

5. 勾玉メインコア: これらすべてを全自動で管理する『ずっと一緒ルーター』。


(BGM:『極光の彫刻〜神の指先〜』開始)

※ハープの美しい旋律の裏で、処理落ちしかけたシステムボイスの電子的な絶叫が同時に響き渡る、神聖さと異常事態が混ざり合った楽曲。琴音の「平和な願い」が、システムの限界を超えて「神話級の概念」へと翻訳されていく様子を象徴する。


【System Warning:指定された機能群に『戦闘的価値』が一切検知されません。……演算不能】

【System Error:愛着のオーバーフローによる強制介入。……これより、全ての『平和的機能』を『神話級・概念防衛』へと自動昇華(翻訳)します】


工房が、再び神々しい虹色の極光に包まれた。


システムは、私の「ただの毛繕いと温もり」を、あらゆる状態異常や即死呪いさえも弾き飛ばす『絶対浄化&概念結界』へ。

「迷子防止機能」は、次元の壁すら超えて互いを強制転移で引き寄せる『因果のディメンション・テザー』へ。

「お腹空きアラート」は、魂の欠損や生命力の低下を0.01秒で検知する『存在保障ライフ・モニター』へ。

「リラックスマッサージ用の櫛」は、撫でるだけでHPとMPが全回復する『奇跡の霊薬エリクサー効果』へと、勝手にデタラメな書き換えを行っていく。


「おいおいおい……! 魔法陣の書き込み速度が速すぎて見えねぇ! どんな複雑な神代の数式をぶち込みやがったんだ!? これじゃあ魔導具職人グッズマスターなんてレベルじゃねぇぞ、世界を創る『創造主クリエイター』じゃねぇか!」


バルガスさんが頭を抱えて叫ぶ中、私はただ「うんうん、可愛い桜色になってきたわね」と呑気に光り輝くアクセサリーたちを眺めていた。


やがて光が完全に収まると、6つのアイテムには繊細な桜の花びらの紋様が刻まれ、見る者の心を温かく落ち着かせるような、柔らかな光を宿していた。


「完成です! バルガスさん、見てください! とっても可愛くて、便利そうなグッズになりましたよ!」


「……便利、か。ああ、そうだな。お嬢ちゃんにとっては『子狐がお腹を空かせたのが分かる』ことのほうが、魔王を倒す力や世界を救う力より大事なんだもんな……」


バルガスさんは、もはや一周回って悟りを開いたような幽霊のような顔で、ガクガクと頷いた。


こうして、世界で唯一の、そして世界で最も平和で恐ろしい「神話級フルオートお揃いグッズ」が誕生した。

私が『グッズマスター』……を通り越して、ゲームシステムのバグそのものになりつつあることに、私はまだ気づく由もなかった。

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