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【改稿版】八百万の幻獣物語 〜「ただモフモフしたいだけなんです!」愛とスキルを『モフモフ』に注ぎ込んだ戦闘力ゼロの社畜OL。懐かれすぎた神獣とのスローライフの裏で、今日もギルドが胃痛で泣いています〜  作者: 蒼葵美
【第4章】 愛着のオーバーフロー:魔導具製作編

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0038. 初グッズ製作!失敗と成功の天秤

虹色の光の奔流の中で、6つの遺物と翡翠の魔石が空中に浮かび上がり、複雑な魔法陣のネットワークを形成していく。

だが、その幻想的な光景の中で、バルガスさんの顔だけは青ざめ、額からは滝のような汗が流れ落ちていた。


「……お嬢ちゃん、ここが正念場だ! 今、メインコアの『勾玉』が、他の5つの古銀と魔石の膨大なエネルギーを束ねようとしてる! だが、素材の格が高すぎて反発が起きやがった!」


バルガスさんの野太い声が、光の渦を切り裂いて響く。

高ランク素材を用いた神話級の魔導具製作。その最終フェーズには、熟練の職人たちから『成功と失敗の天秤』と恐れられる魔力判定現象が存在する。

今、魔法炉の上空には、天のことわりを示すかのような巨大な「光の天秤」の幻影が浮かび上がっていた。そしてその天秤は、恐ろしい勢いで「失敗(大爆発)」の側へと大きく傾き始めていたのだ。


(……クソッ、目視での成功率は良くて5%以下か!? いくらあの奇跡の溶媒があっても、初心者のお嬢ちゃんの魔力制御じゃ抑えきれねぇ! 普通ならここで全てが灰に変わる……!)


バルガスさんが奥歯を噛み締め、最悪の爆発に備えて私を庇おうと一歩踏み出した、その時。


私の視界のど真ん中に、先ほど消し飛んだはずの半透明のシステムウィンドウが、バチバチと赤いノイズを散らしながら、まるで「システムとしての最後の意地」を見せるように強引にポップアップした。


【System Alert:Final Integration Phase(最終結合フェーズ)】

【Success Probability(成功確率):4.8%】

【Failure Probability(失敗確率):95.2%】

【Status:Critical Unstability(極めて不安定な状態。ロストの危険性大)】


「……あら? 何だか難しい数字が出ていますね」


私は首を傾げた。

バルガスさんが見ているような「絶望的な光の天秤」の危機感も、システムが警告する「95.2%の失敗」という現実的な数字も、今の私にはまったく響いていなかった。


私の脳裏を占めているのは、ただ一つ。

このお揃いのアクセサリーを身につけて、快適な温度と最高のブラッシングに目を細め、嬉しそうに九本の尻尾を振る狐火ちゃんの、とびきり可愛い未来の姿だけだ。


「失敗なんて、したらダメですよ。……だって、狐火ちゃんが楽しみにしてるんだから」


私がそう優しく呟きながら、空中に浮かぶ勾玉メインコアに向かって、両手で包み込むようにそっと祈りを捧げた瞬間。


(BGM:『運命の審判 〜断ち切られる因果〜』開始)

※重厚なパイプオルガンの響きが突如として鳴り響き、運命の天秤を物理的にねじ伏せる。システムが琴音の「愛着」を拒絶できず、確率演算すら放棄して降伏する様子を象徴する、荘厳かつシュールな楽曲。


脳内で、あの無機質なシステムボイスが、かつてないほどの激しい電子ノイズを混じらせて絶叫エラーを吐き出した。


【System Error:Probability Logic Error(確率演算エラー)】

【Intervention by 'Affection Overflow' detected.(『愛着のオーバーフロー』による極度干渉を検知)】

【Calculating... Success Probability:4.8% >>> 100.0%】

【Reason:The system cannot deny the owner's love.(エラー理由:システムは、テイマーの愛を否定できないため)】


直後。


「な、なんだって……!? 天秤が……『失敗』側の重りが、理不尽に消し飛びやがった!?」


バルガスさんが、目玉がこぼれ落ちそうなほど見開いて叫んだ。

本来なら素材が反発し、工房ごと吹き飛ばすはずだった膨大なエネルギーが、私の「愛着」という名の巨大な重力バグによって問答無用でねじ伏せられ、スゥッと勾玉の芯へと吸い込まれていく。


成功か、失敗か。

システムが定めた絶対的なルールの壁すらも、私の「モフモフへの執念」が強引に叩き割り、「100%の成功」へと運命ごと書き換えてしまったのだ。


「……できた。ほら、バルガスさん! ピッタリくっつきましたよ!」


虹色の光が弾け、静寂が訪れた工房。

空中に浮かんでいた6つのアイテムは、互いに共鳴するような淡い光の糸で結ばれ、ゆっくりと作業台の上へと舞い降りた。

古銀と虹色の溶媒は完璧に混ざり合い、翡翠の魔石を優しく、それでいて絶対に離さない強固さで抱きかかえている。


「……バカな。魔法工学的な絶対理論を、根底から無視してやがる。お嬢ちゃん、お前、最後の一瞬で一体何をした?」


バルガスさんは震える足で膝をつき、魂が抜けたような深い溜息をついた。


「えっ? 心を込めて、『お願い!』ってしただけですけど」


「……『お願い』一つで、成功率の壁を95%も理不尽に覆すのかよ。これじゃあ、奇跡を司る神様も真っ青だな」


彼が今まで何十年もかけて積み上げてきた「技術と確率」という名の誇り高き積み木が、琴音という天然の嵐によって、完膚なきまでに粉砕された瞬間だった。


失敗の余地など、最初から1ミリも存在しなかったのだ。

狐火ちゃんへの愛が、この世界のシステムからさえも「失敗する自由」を奪い取ってしまったのだから。

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