0032. 初ソロ報酬でグッズ作製したい
「……ふふふ。やっぱり、これですよ。これこそが私の求めていたスローライフです!」
私は東の湿原のほとりで、収穫カゴいっぱいに詰まった「綿毛草」を眺めて、平和な勝利のポーズを決めた。
今回のソロクエストは、誰にも邪魔されず、狐火ちゃんと追いかけっこをしながら、ただひたすらにモフモフした草を摘むだけ。
薙刀を振るう必要もなければ、周囲の森を更地にする心配もない。
(……ああ、あの日の般若な私は幻だったんだわ。今の私は、ただの草摘み乙女……!)
そんな満足感を胸に、私は狐火ちゃんを連れてギルドへと続く一本道をのんびりと歩き始めた。揺れるカゴの中から、摘みたての綿毛草がなぜか淡く柔らかい光を放っている気がするけれど、きっと気のせいだろう。
(さて……一つ目の素材、『魔力を保持するための裏地(綿毛草)』はこれで確保完了、ね)
私は歩きながら、これからの計画を頭の中で整理してみる。
(ベースになるのは、あの日ゴミ処理場の受付のおじさんから押し付けられた『6つの遺物』。指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアス、ブラッシング用の銀の櫛、そして謎の勾玉……。これに、この綿毛草を組み合わせれば、手触りも魔力効率もいいグッズの土台ができるはず。
……あとは魔法を動かすためのエネルギー源として、『魔石』なんかも必要になるのかしら。まあ、詳しいことは工房の親方に相談しながら確認すればいいわね。まずは材料を持って行ってみましょう!)
そうと決まれば足取りも軽くなる。賑やかな六花の街の門が見えてきた。
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ギルドに入ると、受付には少し顔色の良くなった若菜さんが待っていた。
「おかえりなさい、琴音さん。……あら、本当に『普通』に帰ってきたわね。東の湿原が砂漠になってなくて安心したわ」
「若菜さん、失礼ですよ! 私はいつだって普通です。ほら、綿毛草も指定の倍は採ってきました!」
「はいはい、お疲れ様。……じゃあ、これが今回の報酬ね」
若菜さんから手渡されたのは、クエスト報酬の銀貨数枚。そして、依頼主から「余った分は好きにしていい」と言われた高品質な綿毛草の残りを、私は大事にインベントリへ収めた。
「若菜さん、私、この報酬と素材を持って、早速あの工房に行ってきます!」
「あら、気が早いわね。……でも、その綿毛草は魔力を蓄えやすい性質があるから、魔導具のクッション材や装飾には最適よ。琴音さんの持ってる例のアクセたちを加工するなら、いい素材になるわ。……紹介状、忘れないでね」
私はギルドを飛び出し、ソロで稼いだ初めての報酬と素材を注ぎ込み、自分と狐火ちゃんのためだけの「オリジナル魔導具」作製という、新しい楽しみに胸を躍らせ、若菜さんに教えてもらった街の裏通りにある工房へと向かうのだった。そこは、年季の入った看板に『魔導具工房・鉄の木』と刻まれている。
(ドキドキするわね。気難しい親方さんって、どんな人かしら……)
(BGM:『工房での作製〜ワクワクの錬成〜』開始)
※別名『魔導具を作る』。小気味良い金槌の音と、弾むような木管楽器のメロディ。オルゴールや木琴を使った、まるでお母さんがお裁縫をしているような温かみのなかに錬成への期待が詰まった手芸BGM。 脳内に小気味良い金槌の音と弾むような木管楽器のメロディが流れ出す。
扉を開けると、ツンとするオイルと焦げた魔石の匂いが鼻をついた。奥の作業台では、背中の丸まった小柄なドワーフ風の老人が、ゴーグルをずらしてこちらを睨んでいる。
「……紹介状のない奴は、お断りだ」
「あ、若菜さんからこれを……!」
私は慌てて紹介状を差し出した。老人はそれをひったくるように受け取ると、フンと鼻を鳴らした。
「……あの『ノロケ娘』の紹介か。……で、何をしたいんだ、お嬢ちゃん」
「はい! この6つのアイテム……指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアス、銀の櫛、勾玉を、私の生活を助けてくれる魔導具に作り替えてほしいんです。あと、この綿毛草も使えますか?」
私は、あの日もらった「6つの遺物」と、先ほどソロクエで手に入れた「綿毛草」を作業台に広げた。
それを見た瞬間、老人の目がカッと鋭く見開かれた。
「……ほう。このアクセや櫛、見た目は泥まみれでボロボロだが、芯に使われてる金属は今の市場には出回らん『古銀』じゃねえか。魔力の浸透率が異常に高い。……そしてこの綿毛草。お嬢ちゃんの魔力が無意識に移ってやがるのか、やけに神々しくキラキラしてやがるな」
老人は、まるで極上の酒を見つけたようにニヤリと不敵に笑った。
「面白い。お嬢ちゃん、これはただの『生活魔導具』じゃ収まらんぞ。……どんな『グッズ』にしたい? 注文を聞いてやる」
「えっと……! まずは、狐火ちゃんが快適に過ごせて、私も楽ができるような……そんな『最高に可愛いグッズ』がいいです!」
私は、ソロで稼いだ初めての報酬と素材を注ぎ込み、自分と狐火ちゃんのためだけの「オリジナル魔導具」作製という、新しい楽しみに胸を躍らせるのだった。




