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【改稿版】八百万の幻獣物語 〜「ただモフモフしたいだけなんです!」愛とスキルを『モフモフ』に注ぎ込んだ戦闘力ゼロの社畜OL。懐かれすぎた神獣とのスローライフの裏で、今日もギルドが胃痛で泣いています〜  作者: 蒼葵美
【第4章】 愛着のオーバーフロー:魔導具製作編

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0031. クエ相談に何故か相談料が...

「若菜さん、クエストの前に……ちょっと聞きたいことがあるんです。そのブレスレットみたいな『魔導具』って、私でも作れるようになりますか?」


身を乗り出した私の質問に、若菜さんは一瞬きょとんとした後、手首のブレスレットを愛おしそうに撫でながらふふっと笑った。


「魔導具製作、ねぇ。……いいんじゃないかしら? 薙刀を振り回して森を更地にするよりは、ずっと琴音さんにお似合いの『おしとやかな趣味』だと思うわよ」


「……うう、やっぱりこの間のことは言わないでください。あれは本当に、昔の封印していた野蛮なクセが出ちゃっただけなんです!」


必死に弁解する私を見て、若菜さんは楽しそうにクスクスと笑い声を上げた。

でも、すぐにギルド職員としての真面目な顔になり、私のインベントリの奥にしまってある「あのアイテム」を思い起こさせるように言葉を続けた。


「魔導具製作には専門のスキルや知識が必要だけど、琴音さんの場合、ベースになるものはもう持っているしね。あのゴミ処理場の受付のおじさんから貰ったっていう、指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアス、銀の櫛、それに謎の勾玉の6点……。あれ、鑑定官はゴミ山の遺物だって切り捨てたけど、実は『魔力を通しやすい古い器』としては、かなり質が良いものだったみたいなの」


「えっ、そうなんですか?」


「ええ。磨いて、適切な魔石を組み込んで、魔法陣を刻めば……立派な生活魔導具に生まれ変わる可能性は十分あるわ。……でもね、琴音さん。こういう『専門的なアドバイス』や『職人の紹介』って、実は本来、通常のクエスト相談の範囲外なのよね」


若菜さんはそこで言葉を切り、いたずらっぽく目を細めた。


「ギルドの規定では、こういう特殊な相談には『相談料』をいただくことになっているんだけど……どうする?」


「えっ、相談料……? お金が必要なんですか?」


私は思わず身構えた。インベントリには大根の口止め料として貰った『大金貨3枚(約3000万円)』という大金が入ってはいるけれど、元・社畜の悲しいさがで「有料オプション」と言われると警戒してしまうのだ。私の大事なスローライフ資金が、相談だけで削られてしまうのだろうか。


不安げな私を見て、若菜さんはカウンター越しにグイッと顔を近づけてきた。その瞳は、獲物を見つけた肉食獣……ではなく、恋バナを誰かに聞いてほしくて飢えまくっている『乙女の輝き』を放っている。


「お金じゃないわよ。今回の相談料は……『私の話を最後まで、一言も漏らさずニコニコして聞くこと』! これでどう?」

(BGM:『若菜の恋心ラプソディ 〜のろけと胃痛のポリフォニー〜』開始)

※『琴音のメインテーマ』ののんびりしたギターを土台に、『若菜の胃薬と労災申請』のラグタイムピアノと、『若菜さんの「クサレオヤジ」大演説』のハイスピードなスネアドラムが混ざり合う。琴音のマイペースさと若菜の止まらないマシンガントークの衝突を象徴する、コミカルで騒がしいハイブリッドBGM。


「……えっ、それだけでいいんですか?」


「『それだけ』じゃないわよ? 覚悟しなさい、結構長くなるんだから!」


若菜さんはコホンと一つ咳払いをすると、もう隠しきれないといった様子で、頬をリンゴのように赤らめながら猛烈な勢いで語り出した。


「実はね、このブレスレットをくれた彼っていうのがね……。昨日、あの光る巨大大根の件で神殿騎士団が押し寄せてきて、私がパニックと胃痛で死にそうになってた時に、『疲れてるみたいだから、これで少しでも癒やされて』って、スッ……と渡してくれたのよ! もう、なんてタイミングなの!? 私のピンチを救う王子様かと思っちゃったわ!」


「お、王子様……。それは……ご馳走様です、若菜さん」


(……ってことは、私が大根でパニックを起こしたおかげで、若菜さんの恋愛フラグが立ったってこと? なら、まぁ……結果オーライね!)


それからたっぷり30分。

私は若菜さんの惚気のろけ話を、元・社畜時代に培った「上司の自慢話を最高のタイミングで相槌を打って気持ちよくさせるスキル」をフル活用して聞き続けることになった。

彼がどれほど優しく、どれほど魔導具の知識が豊富で、どれほどこのブレスレットを選んだ時のエピソードが素敵だったか……。


(……これが、ギルドの特別相談料。金貨を払うより、ある意味でSAN値と体力を削られるわ……)


でも、その長く甘い「相談料」を払い終えた後、若菜さんは憑き物が落ちたように満足げなため息をつき、一枚の紹介状をサラサラと書いてくれた。


「ふぅ……スッキリしたわ。……はい、これ。ギルドが提携している魔導具工房の紹介状よ。そこの親方は気難しいドワーフだけど、腕は確か。私の名前を出せば、基礎の基礎くらいは教えてくれるはずよ」


「ありがとうございます! 若菜さんのノロケ、聞いた甲斐がありました!」


「ノロケじゃないわよ、純愛よ! ……さあ、本来のクエストの相談に戻りましょうか。魔導具の材料(魔石)集めも兼ねられるような、おしとやかなソロ向けのいい場所があるわよ」


こうして私は、若菜さんへの「相談料(恋バナの全力拝聴)」と引き換えに、魔導具製作への第一歩となる紹介状を手に入れた。

封印したい武人としての自分ではなく、便利な道具を作る優雅な乙女クリエイターを目指して。

私のスローライフ活動は、また新たな方向へと動き出そうとしていた。

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