0023. 閑話:【カーター】チームクエストへの誘い
冒険者登録を終えてからの数日間、オレたちはひたすら街の周辺で討伐系クエストをこなしていた。
全員が近接の前衛物理職という極端なパーティー構成だが、逆に言えば火力と耐久力だけはある。初心者向けの魔物をタコ殴りにしてなぎ倒す分には、まったく苦労しなかった。
だが、最大の問題はパーティーの「中身」だ。
移動中も戦闘中も、聞こえてくるのは武器がぶつかる音と、魔物の断末魔、そしてたまに漏れるオレの業務的な指示だけ。ドレット、バーニ、ジルの三人は、相変わらず石像のように黙りこくっている。
正直、最新のVRMMOを楽しんでいるというより、無言でノルマを消化する「作業ゲー」を淡々とこなしている気分だった。
(……もっとこう、普通のパーティーみたいに『今のナイス連携!』とか『終わったらあの店で飯食おうぜ!』とか、そういう他愛もない会話がしたい……!!)
そんなオレの精神的限界(ソロプレイより孤独なパーティープレイ)を察してか、ギルドの受付嬢・ユミルさんが声をかけてきた。彼女は、あの氷の美人受付嬢・若菜さんの部下で、いつも同僚のクラッガをいじって遊んでいる気さくな人だ。
「カーターさん、おはようございます! 今日も『無言の行』、お疲れ様ですっ」
「……いや、好きで滝行みたいな修行をしてるわけじゃないんですけどね」
「あはは。そんなカーターさんに、たまには『チームクエスト』なんてどうですか? 実は上司の若菜さんから、ちょうどいいパーティーを探してって頼まれてるんです」
ユミルさんが提示してきたのは、東にある農業村での『リトルボアープ』の討伐依頼だった。
ボア(猪)の亜種で、体長30センチほどのモコモコした動物らしい。
「ただの小型動物の駆除か。……でも、そんなに不人気なんですか?」
「ええ。素材にならないしお肉も少ないから、依頼報酬以外の『旨味』がまったくないんです。Gランクの方もあんまり受けてくれなくて」
本来なら、攻略組を目指すガチ勢としては効率重視でスルーする案件だ。
だが、今のオレには「別のパーティー(オレ以外の喋る人間)と一緒に活動する」という一点が、枯れ果てた砂漠に降る慈雨のように魅力的に見えた。
「……分かりました。受けましょう。ただし、うちは後ろの三人が極度のコミュ障で迷惑をかけそうなので、合同相手はできれば少人数の……そう、ソロの人とかがいいんですが。そんなワガママ通りますか?」
「あっ、それなら条件ぴったりです! 若菜さんが声をかけようとしているのも、ソロのプレイヤーさんですから」
ソロの……男か。
効率度外視の修行僧みたいな奴かもしれないが、少なくとも三体の石像よりはマシだろう。
だが、ユミルさんは満面の笑みで、しれっと特大の爆弾を落としてきた。
「ちなみに、女性の方ですよ。すっごい美人さん!」
「「「「…………!!」」」」
その瞬間、オレの背後に立つ三人の気配が、ビクッ!と大きく揺れた。
(おい、お前ら無言のくせにそういう単語への反応速度だけは一丁前だな!?)
「えっ、あ、女性……。いや、でもソロで不人気の討伐クエを受けようとするなんて、よっぽどこだわりのあるガチ勢なのかな……」
「うふふ、会ってみてのお楽しみです。じゃあ、私は若菜さんに報告してくるので、カーターさんたちはあそこの待合スペースで待っていてくださいね!」
ユミルさんに言われ、オレたちはギルドホールの隅にある待合スペースで待機することになった。
背後の三人は、目に見えてソワソワし、顔を赤くしてガチガチに緊張し始めている。
しばらくして、氷の美人受付嬢・若菜さんに案内されてやってきたのは――
三体の石像を指揮してすり減ったオレの心を、のちに文字通り「別の意味(物理的な破壊)」で粉砕することになる、あの和服の女性だった。




