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0016. 図書室で見つけたモフモフの夢と冬早の歩き方

自分のスキルの確認を終えた私は、図書室の静寂の中で、もう一冊の分厚い本を開いた。タイトルは『モフモフ幻獣生態図鑑(冬早版)』。今の私にとって、聖書バイブルと言っても過言ではない一冊だ。


「……わぁ、すごい。本当にモフモフがいっぱい……!」


ページをめくると、まず目に飛び込んできたのは『フェンリル』の挿絵だった。極北に住む巨大な狼で、その咆哮は空間をも凍てつかせると書かれているが、描かれたその姿は、どう見ても「最高に大きなワンコ」にしか見えない。

さらには、雪の上をシュバッ!と滑るように走る『イタチ・ヴァルキリー』。小さな体に北欧の戦乙女のような鎧を纏ったその姿は、可愛らしさと凛々しさが同居している。


(いつか絶対、この子たちを私の膝の上に乗せてみせる……!)

私のモフ欲が、ページをめくるたびに激しく燃え上がる。


さらにページをめくると、ひときわ小さな幻獣の情報が載っていた。

種族名は『流爽人(りゅうそうじん)』。コロポックルを思わせる小柄な姿をした水氷属性の希少種で、クールな性格だが、実は「可愛らしいもの」が好きというギャップがあるらしい。

何より私の興味を惹いたのは、彼らが「塩辛い海産物」に目がなく、胃袋を掴めば深い絆を結べる可能性があるという記述だ。


「なるほど、胃袋攻略ね。メモメモ……」


続いて手に取ったのは『冬早国・特産品ガイド』だ。そこには、私のスローライフを一段上のステージへ引き上げてくれそうな、魅力的な村々の情報が詳細に記されていた。


---

❄️冬早国の旅路と名産品リスト

樹氷の里『木霊こだま

北の山間部にある、マタギと木こりの村。ここで採れる「魔力を帯びた神聖な木材」は、最高級の工芸品素材になるらしい。これで狐火ちゃん用の『特製天然木ブラシ』を作れば、その毛並みは一体どれほどツヤツヤの極致に至るのだろうか。


漁港の村『フロストヴィーク』

北の海にある、ヴァイキング船と舟屋が並ぶ港町。市場の店主が言っていた「北の港」の正体はここだったようだ。名産は「極北の氷雪塩」。脂の乗ったサーモンや巨大なカニをこの塩で調理すれば、先ほどの『流爽人』だってイチコロに違いない。


農業村『穂波ほなみ

六花から馬車で3時間ほどの距離にある、のどかな農村。特筆すべきはその土壌が育む「甘みの強い野菜」で、特に大根などの根菜類は、一度食べれば他の野菜が食べられなくなるほどの絶品だという。「お野菜が美味しい村……。狐火ちゃんの健康のためにも、いつか大量に仕入れに行かなきゃ!」


川と桜の村『ヴォールビィ』

街の東側、ラパイ川の下流域にある神秘的な村。ここには何百年も花を咲かせない「巨大な桜の木」が御神木として祀られている。『神話の時代、神使が降り立った時だけ咲く』というロマンチックな伝説があるそうだが、……そんな素敵な光景、一度でいいから見てみたいわね。果たして私が生きている間にその光景を見ることはできるのだろうか。

---


「行きたい場所が多すぎて困っちゃうね、狐火ちゃん」


私が夢見心地で図鑑の別の幻獣をデレデレと眺めていた、その時だった。


(ピタッ……!)


私の脳内に流れていたのどかなメインテーマが突如として止まった。代わりに、情熱的で少しスリリングなタンゴ(BGM:『無言のしっぽデモ〜嫉妬の焔〜』)が鳴り響く。

※カスタネットの代わりに、狐火ちゃんのしっぽが床を叩く「バン! バン!」という乾いた打撃音がリズムを刻む、もふもふ嫉妬警報専用BGM。


(バシッ!バシッ!ドゴォォンッ!!)


「ひゃっ!?」


見れば、机の上で狐火ちゃんが図鑑の上にどっかと座り込み、私の視界を物理的に遮断していた。そして、彼女自慢の9本の尻尾が、不満を露わにするように机を一定のリズムで叩いているではないか。まさに、もふもふ嫉妬警報の発令である。


「あ、ごめんね狐火ちゃん!浮気じゃないのよ!、ただの『予習』よ!あなたが世界一可愛いに決まってるじゃない!!」


私は慌てて図鑑を閉じ、全力で狐火ちゃんの喉元を撫で回した。

「クーゥ、クゥ……」ようやく満足したのか、狐火ちゃんは勝ち誇ったような顔でお腹を見せてきた。


どうやら、冬早国の冒険は一筋縄ではいかなそうだ。

でも、魅力的な特産品と、至高のモフモフたちが待っている。

少しの「嫉妬」という隠し味を得て、私のスローライフへの決意はますます固まるのであった。

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