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0015. ギルドで読書タイム

西街での買い物を終え、一旦寮に戻って食材を魔導冷蔵庫にしまい込んだ私は、足早に再び冒険者ギルドへと向かった。

「よし、これで準備はバッチリ。狐火ちゃん、次はギルドに行ってスキルやレシピの確認をしてこようね」

「クーゥ!」

私の足元で、狐火ちゃんが期待に満ちた声を上げる。


ギルドのホールは、相変わらず多くの異邦人プレイヤーたちで賑わっていた。私は受付にいた若菜さんに声をかける。


「若菜さん、こんにちは。スキルの詳細やレシピを確認したいんですけど、どこに行けばいいですか?攻撃スキルとか魔法を使うわけじゃないので、訓練場じゃなくてもいいかなと思っているんですが」


「琴音さん、こんにちは。……ええと、念のため確認したいスキルを、少し小声で教えてくれるかしら?それによっては、特別な防音室や地下の隔離施設を案内することになるから」


若菜さんが少し真面目な顔で身を乗り出してきた。

「え?そんな、周りを気にするような特殊なスキルは持ってないですよ。確認したいのは、『幻獣理解』『幻獣料理』『魔導具製作』『採集』『調合』の5つです」


「……あ。……あぁ、よかった。その……生活系スキルばかりなのね。本当によかったわ……」

若菜さんは目に見えてホッと胸を撫で下ろすと、ガクガクと震えていたペンを置き、2階を指し示した。


「それなら、2階の奥にある図書室に行くといいわ。スキルを解説した本や料理・調合の基本レシピ本、この辺りで採れる植物の図鑑も何冊か置いてあるから。気に入った本があれば、この受付で販売もしているわよ」


若菜さん曰く、初心者向けの本なら銅貨2枚(約2000円)程度。だが、中級以上になると銀貨1枚から、中には大金貨数枚(数百万円!)という、ブラック企業の退職金すら一瞬で吹き飛ぶような高額な古文書まであるらしい。


「お金、大事に使おうね……、狐火ちゃん」

私は財布の紐を締め直しながら、ギルドの2階へと続く階段を上がった。


図書室は高校の教室2つ分ほどの広さで、重厚な木製書架と、ガス灯を模した魔導ランプが灯る、静謐な空間だった。


入り口付近にある、アンティークな木製の「本の検索機(どうやら魔導具らしい)」に触れる。画面に自分の5つのスキルを入力すると、それぞれの解説本が保管されている棚の番号が表示された。


「……あ、これ面白そう」検索結果の隅に表示された『モフモフ幻獣生態図鑑(冬早版)』や『冬早国名所ガイド』といった本のタイトルに、つい好奇心が惹かれる。市場で聞いた「北の海の港」の正体も載っているかもしれない。

でも、まずは本来の目的を済ませなきゃ。


私は目的の棚から数冊の本を抱え、日当たりの良い窓際のテーブルに腰を下ろした。


(BGM:『琴音のメインテーマ〜今日もモフモフ日和〜』に切り替え)

※アコースティックギターとリコーダーを使った、のほほんとした気の抜けるようなスローライフ曲。お茶を飲んだり、鼻歌まじりに歩いたりする時の琴音の日常を象徴するテーマ。


ゆったりとした落ち着いた調べが、私の読書タイムを包み込む。


私は集中して、自分のスキルの内容を読み解いていく。


【幻獣理解(冬早)】

スキルレベルが上がれば、アイコンタクト、念話等ができるようになる。ただし、同じ幻獣種族でも、当然個々に性格・資質が異なるので、明確な体系化が出来ていない。

 幻獣本を読むことで、レベルが上がりやすくなることだけは、証明されているので、積極的に本を読むように。

(将来的に狐火ちゃんと『次はあのおやつがいいわ』なんてお喋りできるようになったら最高じゃない!そのためには幻獣関連の本を積極的に読むのが近道なのね)


【幻獣料理(冬早)】

 幻獣向けの料理を作るときに品質に上方補正が付いたり、料理の手際がよくなり、時間短縮ができるスキル。

 ただし、同じ幻獣種族でも、当然個々に味の好みが異なるので、どこまでこのスキルの品質上方補正の影響なのか、明確に立証は出来ていない。

 幻獣理解と合わせて活活用することで、その個体の「好みの味」にピンポイントで調整しやすくなるので、スキルが上がりやすい。手際よくやるには、数をこなすしかない。

(『幻獣理解』と合わせて活用すると、その子の好みの味に調整しやすくなるんだって。まさに愛の連携スキルね!狐火ちゃんの『美味しい!』という顔のためなら、いくらでも修行するわ!)


【魔導具製作】

プレイヤー用、幻獣用、対魔物用の3系統に分かれる。それぞれの上位スキルをすべて極めると、未だ誰も到達したことのない『最上位スキル』への道が拓かれると言われているらしい。

(お揃いのアクセサリーに不思議な力を込める……。これ、やり込み要素が凄そうね。夢が広がるわ!)


【採集(冬早)】

森などで素材を見つけやすくなったり、採集するときにキレイに採集できたり、鮮度保持に補正が入る。スキルレベル・熟練度が上がると、採集ポイントがわかりやすくなるが、そのためには、採集知識が必要となる。千里の道も一歩から。

(千里の道も一歩から、か。まずは地道に図鑑を読み込んで、採取知識を増やすことが鍵なのね)


【調合】

素材を組み合わせて新たな製品を生む技術。調合した者同士をさらに複数回利用して、上位製品を作製することも可能。初級レベルならレシピ通りにやれば失敗はほぼしないが、何度も失敗するようなら『才能がないので諦めたほうがよい』とまで書かれている。

(……才能がないなら諦めろだなんて、厳しいことが書いてあるわね。でも、狐火ちゃんのためなら失敗なんてしていられないわ!社畜の根性を見せてやるわよ!)


一通り読み終えて満足した私は、ふと自分のステータスボードの隅にある『魔使力』という項目に目が止めた。


「あれ?壊れてるのかな。なんだかここだけ文字化けしてて読めないわね。数値がバグって表示されてるけど、まあ、攻撃魔法とか使うわけじゃないし、いいか」

そこには、読み取り不可能なノイズのような文字列が明滅していた。本来なら、システムが計測不能に陥っていることを示す表示なのだが、それを知らない私は「初期不良かな?」と首を傾げ、深く考えず、再び本の世界へと視線を戻した。


次に手に取ったのは、気になっていた『名所ガイド』や『生態図鑑』も棚から抜き出してみた。

パラパラとページをめくると、そこには私の知らない冬早国の、そして「至高のモフモフ」たちの広大な世界が広がっていたのだ。

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