成就そして帰還
時が過ぎた。
ムルや国王など以外にも、理解者たちは増え、遂にそれは成し遂げられた。〈人間と魔族の対等な関係〉を築く事。
城から見下ろす街には、人と魔族が入り交じっている。楽しげな笑い声。威勢のいい商人のかけ声。
走り回る子供たち。
レーミアは、ふぅ、と息を吐いた。
―ここまで、長かった…。
全くもって〈闇に棲まう影たち〉め…。
「やっと、家に帰れる…」
そう。〈闇に棲まう影たち〉からの依頼は、〈最初からこれ〉だったのだ。異世界・イルファスにおける、魔族の環境改善。魔王退治はその端緒に過ぎなかった。
「んー」と、声をあげ、レーミアは伸びをした。心に達成感と解放感がある。
コンコン、と、扉をノックする音が聞こえた。
返事をすると、姿を見せたのはロエだった。
彼女はレーミア付きのメイドとして仕えていてくれたのだ(もちろん、レーミアは断ったのだが)。
「レーミア様、準備が整った、との事です」
静かな声音で告げる。
レーミアは、わかった、と答え、彼女とともに城内の教会に向かった。
ここはムルがレーミアを〈召喚〉した場所である。そして。
今日、レーミアは帰るのだ…元の世界へ。
驚く事に、国王の姿があった。
国王はレーミアを娘のように可愛がってくれていた。
両目に涙が浮かんでいる。
また。城の外からは。
「レーミア様ー!」「元気でお過ごしくださいねー!!」など―様々な声が響いて来ていた。
―この世界も、まぁ、悪くなかったよ…。
レーミアは微かに唇に笑みを浮かべ、魔法陣の上に立った。
ムルが呪文を詠唱し始める。
光り出す。
その姿が残像のように揺らぐ。
「じゃあな、〈イルファス〉」
こうして、レーミア・ヤグールは帰還を果たした。




