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解放と罪



巨大な魔力の気配が消え失せた事に、最高位神官であるムルが気付いたのは、未明の事である。

彼は眠れぬひと夜を過ごしていた。

寝装束に着替えたものの、まんじりともせずにいた。

と。

「〈ムル、ムル、聴こえるか?〉」

思念伝達魔法が脳に声を届けてきた。この声は…!

「〈聖女様…!〉」

レーミアからの言葉に彼は、

「〈わかりました、聖女様。仰せの通りに〉」と答えた。



魔王が倒された。

魔王が倒された。

という事は?

「俺たちは自由になれる!!」

叫びは波のように人々の間に伝わった。

ひとりの男が、呆然としている見張りに掴みかかった。

その手から鞭を奪うと、

「いままで、よくぞ、やってくれたな!!」と憤怒も露わに、それを振り下ろした。

「ひっ」息を飲む、見張り。

バシっ、と小気味いい肌に当たる音が響いた。

瞬間、男は目を見開いた。

「〈聖女様〉!?」

レーミアがいつの間にか、男と見張りの間に割って入っていた。

そうして、そのか細い腕で、男の渾身の鞭を受け止めたのだ。

人々がざわめく。

「〈聖女様〉…どうして?」

それを鎮めるべく、レーミアは黒い翼を顕現させ、宙から声を張った。

「聴いてくれ!みんな!!」

その場の全員の耳目がレーミアに集中した。

「まずは…魔王を倒した」

おぉ、っと改めて歓声があがる。

「奴隷にされていた皆、ご苦労だった。夜明けには、国王軍が皆を迎えに来る。傷を負っている者は治療を受けさせて貰えるし、今日の夜までには、皆、家に帰れるだろう」

誰からともなく、声があがった。

「こいつらは!こいつら、魔族連中は皆殺しですよね!?」

そうだそうだ!と追従する声が、そこここからあがる。

見張りたちがすくんでいるのがわかる。

レーミアは首を横に振った。

はっきりと言った。

「いいや。この者らは捕らえる。そうして、裁判にかける。罪をあがなわせる」

その言葉に人々のみならず、見張りたちも動揺した。

「静まれ!」

レーミアの一喝に場がシン、となる。

「元来、人と魔族は平等だったはずだ。それを一部の人間が〈魔族は劣等種〉と決めつけ、差別した」

ぐるりを見回す。もじもじとしている者たちがいる。

「そんな思い込み、差別が、今回の事態を引き起こした」

あえて、レーミアは言い切った。

一部から「俺たちが悪いってのか!?」「いくら〈聖女〉様だからって、言っていい事と悪い事があるぞ!!」と声があがった。

「あぁ、そうだ。その他責思考、無知は一種の罪だ」

だから、とレーミアは続けた。

「償うのは人もだ。私もともに罰を受けよう」

その言葉に人々は―見張りたちも―声を出せなくなった。

レーミアは柔らかな微笑み―〈聖女〉のような、を浮かべ、言った。

「いまは国王軍が迎えに来るのを待とう。無益な争いは、これ以上はなし、だ」

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