決着
戦いは佳境を迎えようとしていた。
レーミアもライラも互いに浅くはない手傷を負っている。
ライラが吠えた。
「我の邪魔をするな!!」
レーミアは血文字の呪文を空に描いた。
「やなこった。死ぬまで、なんだろ?」
放たれたのは雷の大蛇だった。
ライラの身体に巻き付く。
強烈な雷撃に、流石に吸収しきれず、
ライラの絶叫が響いた。
―そのまま、その身体が落下した。
ぐたりと横たわる。
レーミアは警戒しながら、その傍に降りた。
「...殺せ」ライラが言った。
「そなたの勝ちだ...」
そのまま、瞑目する。
首を刎ねよう、と一歩、踏み込んだ時だった。
ライラの三本の角に、雷が集束し、放たれた。
それは的確にレーミアの心臓を貫いた。
声もなく、その身体が崩れ落ちる。
つぅっと、口の端から血が流れる。
ライラが立ち上がり、咆哮した。
「見たか!人間ども!!我を敬うのをやめ、自分たちばかりの欲望に踊った、その最期の姿だ!」
とどめ、とばかりに、レーミアの身体に無数の雷を落とす。
「魔族を蔑ろにし、あまつさえ、隷属させた罪の代償、払って貰う!!」
パチン!と指を鳴らす音が響いた。
突如、世界が一変した。
いままでの世界が、粉々に砕け散ったのだ。
そうして、そこには空で、胡座をかく、レーミアの姿があった。
手傷を負ってはいるが、平然とした様子だった。
「なるほどね...」
呟く。
「魔族を蹂躙された報復ね...。確かに、人間にも問題はあったな。だけど、〈壊す〉のはやっぱり、違うだろ」
ライラは混乱しているようだった。
その瞳が揺れている。
「娘...そなた...」
何故、生きている、と。
「ん? 何故ってそりゃ、途中から戦ってないもん」
そう。レーミアが戦いの序盤に繰り出した〈氷鏡〉。実はあれは、雷撃を跳ね返す為のものと―ライラを〈幻〉の中に閉じ込める為のものだったのだ...。
そう、ライラは幻のレーミアと相対していたのだ。
レーミアはライラを削るべく、〈外側〉から攻撃をしていたのだ。
「馬鹿な...」ライラが呟く。
「卑怯かな?とも思ったんだけどさ。だけど、確実に倒さなきゃいけないからさ」使える手は使わせて貰ったよ。レーミアの声が遠く聞こえた。
じゃあな、魔王様。
そうして、ライラの視界は暗黒に包まれた...。
映し出される映像を人々は―見張りたちも―固唾を呑んで、見守っていた。
『じゃあな、魔王様』レーミアが言った。
ライラの身体が氷に包まれた。
『氷柩』
再び、指を鳴らす。氷ごと、ライラの身体が四散した...。




