広島の迷宮たち
適当に昼飯を食うために、お好み焼き屋に入った四人は、これからの迷宮攻略について話し合っていた。
「広島にある迷宮は15個で、ここから俺たちが行けるのは4つだ。山奥とかにある迷宮はとりあえず後回しにしておく。これでいいな」
「その通りですね。行き来も面倒ですし、私たちの目的はあくまで東京へ行くことですから」
「道中の迷宮を狩りつくすのはいいけど、ルートを抜けてまで行く価値の迷宮はなさそうだし」
「都市圏やその間に大体そろってるからな。内陸にわざわざ行くほどじゃないしな」
人類の多いところは人口も地脈も集まっていることが多いので迷宮はできやすい傾向がある。それに比べ、そこから離れた場所にある迷宮は、単なる管理用、実験用、隠密用などの目的で置かれていることが多い。
「悪魔迷宮はもちろん無理で、市内で一番の人気迷宮である都市迷宮は最後として、お目当ての三つは、路面電車迷宮、住宅街迷宮、養殖場迷宮だ」
「どれも300レベ以下だが、環境が面倒で人気がない迷宮だな」
「レアドロップはいいものが多いとのことですが、割には合わないでしょうね」
「僕たちにはうってつけだね、人が少なそう」
西田がスマホで迷宮の情報と評価を見ながら、皆はそれに耳を傾ける。
「路面電車迷宮は市内にある広島市内に似た街並みで路面電車がガンガン通っている迷宮。推奨レベルは200レベ。影人って魔物が主に出歩いているぐらいで強くはない。ただ電車に轢かれたらそれは現実と変わりないから戦いにくいって不評らしい。電車には乗れないし、駅にはより多くの影人が出てくることがあるとか」
「なるほど、でその一番奥のデカい駅に入るとボス戦になると」
田中が地図を見ながら指をさす。
「うん、大きめの車掌見たいな影人らしい。動きが遅くて体格がいいだけの影人って以外、まぁ普通のボスってさ」
「スキルはなさそうだな。まぁ俺たちの呪で強化されればなんか出るだろうが」
「まぁ200レベの迷宮なんて、ボス戦でスキル持ちが出ればいい方ですからね」
彼らのせいで基準が狂っているが、本来、100レベまでの初心者向けやそこから200レベまでの初心者抜け想定の迷宮でスキルが出ることはめったにない。ボス戦で偶に見えるだけで、道中の魔物がスキルを持つには最低でも300レベは必要になるのだ。
「次に住宅街迷宮で。推奨レベルは120レベ。誰もいない住宅街が並ぶ風景の迷宮で、もちろん家などは背景や張りぼてみたいで入れません。魔物の種類は、電柱やポスト、マンホール型の魔物がいるらしい、あとたまに猫みたいなレアなのも出るって噂」
「下層でも魔物は対して強くないし、猫型の魔物自体は結構いいものをドロップするようだが、不意打ち上等、だまし討ち多数ってことで、斥候いないといけないとか」
「まぁ斥候系のスキル持ちからすると、おいしい迷宮ではないわな。もっと稼げるところ別にあるし」
「ボスは12階層目にいる杖を持った老人型の魔法使いですか。遠距離魔法は厄介だが目立った強さもなく、接近すれば適正レベルあれば余裕と。あ、来たよ」
運ばれてきたお好み焼きを受け取って各々の前に並べる。
「結構うまいな」
「この素材迷宮産みたいですね」
「肉も野菜も海鮮物も迷宮産だらけになったから」
「場所によっては他にもいろいろあるみたいだがな」
迷宮は本当に何でもとれるのだ。そしてそれらは食料品だってもそうで、正直この世界にないものだったものを食べて問題ないかの詳細は謎らしいが、研究では栄養素的には問題ないことはわかっている。
「養殖場迷宮でとれたのを使っているのか、この海鮮お好み焼きは」
「そうだね。最後のはその迷宮です。推奨レベルは260レベ。迷宮の種類は海上の養殖場のような場所。魔物の種類は主に海産物系の魔物がいるらしボスも似たようなものらしいよ。一般的に見ても単独の強さというよりも群れでの強さみたいだから、数重視の迷宮だとか」
「食料が手に入るのに不人気、って言いうか一般的な探索者には厳しいわけか」
「海上ですらかね、足場が不安定で魔物側に有利な環境、そのうえでレベル的に罠が本当に厄介そうで、環境とのシナジーが良すぎます」
海に落ちるでも大変だ、罠のレベルが低くてもそれぐらいならわけがないだろう。それに魔物を倒せてもドロップ品の回収もあるわけで、数重視として見ると嫌われる理由もわかるものだ。
「次から次へと来られるか、または遠くにでも姿が見えているとなると圧がな」
「開けた場所はそうですね。大量に倒して回収に時間がかかり過ぎると途中に襲われる。なんてことも普通にありますし」
「しかも足場が悪いときた、レベリングには向かないからドロップ品で稼ごうにも海に落ちたものはどうしようもないとか」
「専用の装備がないとね。術や装備、道具で自動回収系やそれに近い運用できないといけないわけだ」
できないこともない、近くにあるものを自動的に袋に集める、引き寄せるなどは術を使っても道具や装備品としても確かにあるが、それをこの程度の迷宮で使うのかというと専用の業者が必要になってくる。そしてそうなったら他の探索者に打てる手などなくなるだろう。
「でも、どこも初回報酬はおいしいですから」
「まぁワンチャン、スキルオーブもあるわけだし」
「それ以外は魔石かその迷宮特有の品ですか」
「何かしらの効果が詰まった装備や道具でもいいだろ、統合できるし」
スキルオーブや魔石はどの迷宮でも出るし、困ることは少ないだろう。装備品だって重ねがげして統合すればいいし、彼らには大量討伐による金策も必要だし。
「じゃあ、飯食い終わったら住宅街迷宮でも行くか。そういや広島のほかの迷宮は?」
「推奨レベル200以上のですが、さっと調べた限り広島県内では他にも造船迷宮、階段迷宮、霧の盆地迷宮、鍾乳洞迷宮、水中鳥居迷宮とか色々ありますけど」
「まぁ山奥行く予定ないから、岡山行く際にいくつかは入れるぐらいか」
「ですね。近いならまだしも山奥まで行きたくありませんし」
そんな話をしながら食事を終えた四人は、適当に会計を済ませて退店をしていったのだった。




