42話:杞憂
俺は、藍との関係を《PP》に明かすことはなく、己の心に封じ込めることにした。そして、姉さんの情報を待った。しかし、それから藍からの接触は二週間すぎても来なかった。藍はというと、この二週間、学園に登校していない。これは、俺に接触したことで何かあったのかもしれない。藍と俺の関係が、《死の結晶》とやらに覚られたら、藍も姉さんもやばいはず。
突如、俺のスマートフォンに着信が入った。しかも授業中。マナーモードにしていなかった俺が悪いのだが、授業中に、結構な大きさの音で、匡子先輩の設定した着信音が響いた。スマートフォンに関しては、匡子先輩が勝手に設定しているので、俺はまったく知らない。ただ、隣の席のヘッドホンの少女がバッと勢いよくこちらを見たのが分かった。
「漣く~ん。授業中はマナーモードにしておいてね。それじゃ、ってどうしたの?」
最後のどうしたのは、ヘッドホンの少女へ向けた言葉だった。こちらを凝視している。
「今の曲、《蒼刻の藍紗》のオープニング」
急に何を言い出したかと思うと、目を見開いている。こんな状態のヘッドホンの少女は初めてみた。しかし、残念ながら、俺には、何のことかさっぱり分からない。
「ああ、あれか!」
そう叫んだのは、賢斗だった。どうやら、賢斗は知っているらしい。すると、突如、教室がざわつき始める。「漣君って二次元派だったの」とか「仲間だ、仲間がいた」とか言っている。何のことかさっぱり分からない。
「信也、アンタって、アニメとか見る人だっけ?」
咲耶の急な質問に、ざわついていた人たちは、俺を見る。
「いや、別に」
俺の回答に、皆、疑問符を浮かべる。
「携帯の着信音って誰が決めた?」
咲耶の再びの質問に、匡子先輩のことをどう言おうか悩んだが、普通に匡子先輩で構わないだろうという結論に至り、普通に答えた。
「匡子先輩」
「なるほど、理解したわ。匡子もアッチ側だったから」
そう呟くと、咲耶は、みんなに対して、なにやら言っている。「先輩」やら「アッチ」やらよく分からない表現だが、なにやら納得しているようだ。
「あの~、授業中なんだけど」
先生の声が、生徒達のざわつきにかき消された。
先ほどの着信は、藍からだった。どうやら、心配は杞憂に終わったようだ。




