11話:姉弟
人間の興味の意識と言うものは、案外すぐに薄れるものだ。昼休みにはもう、咲耶は自由の身だった。ただ、まったく興味の関心外というわけではなかったが。もう、友達もできているようで、早速学食を案内されに、連れ出されている。
俺は、藍のことが気になったが、肝心の藍は、周と楽しそうに弁当を食べている。俺の考えすぎだったのだろうか。まあ、分からないことは、いくら考えても仕方が無い。そう思い、俺は、昼休みを睡眠時間へと転換させた。
今日は、ヘッドホンの少女に邪魔されることなく、昼休み最後まで寝ることができた。当のヘッドホンの少女はと言うと、今日は、音楽を、一心不乱に聴いているように見えた。その机の上においてあるパッケージに書いてある文から、本日が発売日であると推測ができたので、どうやら、新曲をいち早く堪能したいらしい。
放課後になり、少々、ふらついている咲耶は、一人、部屋に戻ったようだ。俺は、少し、藍の件が、気になり、部屋に戻る気になれなかった。
そう、あの時見えた藍の目が、まるで、妹を見守る姉のようなものだったのだ。思わず、自分の愚姉を思い出してしまった。
姉。数年前に焼死した、俺の家族の一人。俺に似た、黒い瞳と、茶色の混ざった黒い髪。その髪を、後ろで、縛り、ポニーテイルにしている。いつも、笑顔で、善く言えば楽天家。悪く言えば大雑把。尻拭いは俺の仕事。そんな、姉でも俺を助けてくれることは何度かあった。周の誕生日プレゼントのときとかがその例だ。ぐうたらな姉でも、俺は、別段、反抗をしたことが無かった。別に、姉の尻拭いするのは、慣れたことだったし、むしろ姉の力になっていたことに満足感さえ覚えていた。時折、周にその話をすると、怖いくらいの笑みで「シスコン」と言われたことは、今でも鮮烈に思い出せるくらいだ。まあ、実際にシスコンだったのだろう。家が焼けているときに真っ先に考えたのが、姉が無事かどうかだった。いや、まあ、それは、ひとまず置いておこう。
その姉の目は、俺を見るときは、暖か気で、柔らかい雰囲気。その目と、咲耶を見る藍の目が同じに見えた。彼女は、咲耶とどういった関係なのだろうか。姉妹?親類?親戚?幼馴染?
いくら思考しても分からない。考えをあちらこちらへと巡らせたが、結局、何も分かることが無かった。仕方なしに、ゆっくり、星を見上げながら、俺は自室へと帰った。




