12話:藍
薄暗い部屋で、わたしは、携帯を手に取り、いつもの相手に掛けます。
「もしもし、《神道》さんですか?」
「《群青》か。定時連絡ご苦労だな。何かあったか?」
電話の向こうからは、低い、圧力のある声が聞こえます。
「例の計画ですが、失敗したそうですよ?…………主に、貴方のせいで」
わたしは、わざとらしく、「貴方」の部分を強調して、彼に伝えます。まあ、実際、彼のせいであることには、かわりが無いのですが。
「ほう、それはどういうことだ?」
興味深そうに、彼は、わたしの言葉に耳を傾けています。
「《ベレッタ》を手に持った少年が、あの計画を潰しました。あの《ベレッタ》、銃身の先のほうに、少し傷が入っていました。あの傷、わたしが付けてしまったものですよね」
ベレッタM92。流通量は比較的に多い銃で、米国などでも多く使われている銃です。しかし、いくら流通量が多くとも、同じ場所に傷のある銃は、そうそうないはずです。
「つまり、あの少年が、計画を潰したということか」
彼は、感慨深そうに呟きました。それは、まるで、彼、あの少年が計画を潰すのを確信していたかのような。そんな呟き。
わたしは、電話を終えると、溜息混じりに椅子に腰を掛けます。そして、右腕にしっかりとつけられた紫色の腕輪を撫でます。あまねちゃんと御揃いの腕輪。そして、あの少年とも。
「ねぇ、咲耶。貴女は、なぜ、向こうへ行ってしまったの」
思わず、そう、問いかけていました。何も無い、薄暗い虚空へ。




