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Si Vis Pacem, Para Bellum  作者: 黒桃姫
学園編
11/73

9話:咲耶、来る

「アンタ馬鹿じゃないの?!」

 俺が事件を解決して、《PP》に戻った時の一言目は、そんな罵声だった。

「いきなりなんだよ」

咲耶の罵声に罵声で返した。

「何だ、じゃ無いわよ。あんたが、《私立響乃学園》を見張っていたら、こんな事件起きなかったでしょ」

「確かにそうだが、尻拭いはしただろ!」

「だから、そういう問題じゃないの!」

じゃあ、どういう問題なのか教えてほしいものだ。そう思いながらも、罵声に罵倒したりされたりを繰り返し、醜い言い争いが続く。


 そして、かれこれ、数時間におよぶ言い争いの最中に、それに割ってはいる者が現れた。

「ちょっ、何やってんの、二人とも」

匡子先輩だ。どうやら、騒ぎを聞きつけて、やってきたらしい。相変わらず良い人だ。

「二人とも、そこまでよ。やめなさいって。どうどう」

俺たちは馬かよ。とツッコミたい気持ちを抑えながら、匡子先輩を見る。

「何があったのよ。こんなに長い喧嘩、初めて……じゃないわね。二、三回目だけど珍しいことよ」

「それが、聞いてください」

と、咲耶と俺は、懇切丁寧に、一から十まで説明する。


 すべてを聞き終えた匡子先輩は、溜息交じりに、深く息をついた。

「それで、あんな喧嘩に発展したと」

「そういうことです」

「アンタ等馬鹿じゃないの?!」

咲耶とほぼ同じ台詞を俺達に放った。

「はぁ、もう良いわ。解決策を思いついた」

一息ついてから、続ける。

「咲耶。アンタ、特権で、《私立響乃学園》に行きなさい」


 そうして、次の日から、姫野咲耶は、《私立響乃学園》に通うことになった。


 無論、咲耶は抗議をしたのだが、それをほぼ無視して、匡子先輩が強行したのだ。匡子先輩の権限の強さは、謎が多い。《幹部》クラスである俺等に簡単に命令を出せるあたりが、その権限の強さを語っている。まあ、長い間《指揮官》クラスにいるそうなので、信頼が厚いのかもしれない。俺に、ベレッタを預けた仁藤と言う人物と同期らしいのだが、その辺は、よくわかっていない。


 さて、翌朝のこと。本日、咲耶の所属クラスが明らかになったのだが、偶然にも、一年三組だった。あまり嬉しくは無い。当の咲耶本人は、学校に行く心の準備とやらで、朝から、部屋に籠もっている。俺は、当然のことながら、部屋の前で待機。しかも、学校側の計らいとやらで、部屋を同じ階にさせられたので、賢斗や藍、周に見られたら大惨事である。だが、ここは、身を隠すところがない部屋の前。まあ、そんな頻繁に知り合いが通るわけじゃあるまいし、大丈夫か。俺は、隠れず、堂々と部屋の前で待つことにした。


 しかし、その大惨事は、やってくることになる。

「あれ、信也。こんなところで、何やってんだ?」

そんな風に声をかけて来たのは、紛れも無く、賢斗。タイミングが悪すぎる。

「ここ、四○九だろ。お前の部屋から、だいぶ遠いのに、なんか用なのか。昨日転入が決まった奴らしいけど。……もしかして、お前、転入生が気になるタイプの人間か?そうは見えなかったけどな……。ヤッパリ、人間それぞれ、意外なところとかあるよな」

ずいぶんとうるさい奴だ。まだ早朝だというのに良く喋る。


 そんな時、ドアが内側から、六回ノックされた。六回のノック。これは、入ってこいと言うサインだ。ちなみに、一回が来るな。二回が、ドア越しに聞け。三回が、ドアから離れろ。四回が、中に敵がいる。五回が、近くに敵がいる。となっている。これは、昨日即興で決めた合図。こういう合図は、重要となってくるので、仲間同士でグループ行動するときは、必ず決めるようにしている。


 とりあえず、俺は、賢斗を無理やり追い返し、合図に従って、部屋の中に入った。

「朝からうるさいわよ」

第一声がこれ。

「俺がうるさいわけじゃない」

そう言って、部屋の奥まで入っていく。いろいろと散らかっているのは、目を瞑るとして、流石に、下着類まで、散らかっているのは、どうかと思ったが、いまさらなので、特段気にせず、ベッドに腰をかける。

「で、何に手間取っているんだ?」

「そう、それよ。なに着れば言いと思う?」

制服しかないだろう。そう思った。それと同時に、コイツは莫迦だと悟った。

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