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モテすぎる俺、好意が重すぎて人生崩壊しかけてる ~ その好意、全部バグです~  作者: レモンティー


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第四十三話:世界中の人間を操る計画が始まった

『世界規模の行動変容プラットフォーム、第一段階を開始』。

研究会の関連企業が発表した見出しを見て、神谷は目を疑った。

「……世界中の人間を操る計画って、これか?」

「世界中を操れる証拠はないよ」と七瀬。

「でも、第一段階はもう始めてる」

大学の相談室には、朝倉玲奈が提供した資料が並んでいた。

企画書の最終ページには、海外展開の予定表。

国内で千人規模の体験会を実施し、購買行動の変化を成功例として投資家に示す。

その後、複数の国で同じ形式のイベントを開催する――そう書かれていた。

「俺の能力って、写真や動画だけで発動するんですか?」

「それは確認されていません」と担当職員。

「世界規模という表現は、現時点では事業計画です。能力の再現性を証明するものではありません」

玲奈も頷いた。

「私の感情支配も、会ったことのない人を画面越しに自由に操れるわけじゃない。でも研究会は、心理誘導や広告と組み合わせれば、似た結果を量産できると考えてる」

「似た結果?」

「本人が納得して選んだように見える結果よ」

七瀬の表情が硬くなった。

そのとき、佐伯からメッセージが届いた。

『例のイベント、参加者募集が満員になった。

知り合いが説明会に行ってる』。

ほどなくして、相談室の電話が鳴った。

大学の担当者が受話器を取り、表情を変える。

「……分かりました。無理に現場へ戻らず、安全な場所からお話しください」

電話の相手は、体験会の事前説明会に参加した学生だった。

会場では『商品を選ぶだけの簡単な調査』と説明されていた。

しかし、参加者が同意画面の詳細を質問すると、係員は『皆さん承諾しています』と答えるだけだったという。

「途中で帰ろうとしたら、出口でアンケートが終わるまで待ってほしいと言われたそうです」と職員。

「強制的に拘束されたとまでは確認できません。ただ、退出の意思が尊重されていない可能性があります」

玲奈は資料を握りしめた。

「前に私が関わった説明会と同じ。最初は『少し待って』、次は『もう同意したでしょう』。そうやって断りにくくするの」

神谷は言葉を失った。

能力を使わなくても、人の判断を押し流すことはできる。

そして、そこに本当の感情操作が加わったら。

「……何が本人の意思なのか、分からなくなる」

七瀬は頷いた。

「だから、何に同意するのか説明しなきゃいけない。嫌なら途中で帰れるようにしなきゃいけない」

担当職員は参加者の証言を記録し、関係機関へ共有する手続きを進めた。

午後、玲奈の端末に研究会から一斉通知が届いた。

『国内実証で得られる反応データを基に、海外パートナーへの提案を開始する』。

「……私、もう協力しないって断ったのに」

玲奈は画面を見つめた。

「私の過去のデータを、まだ使うつもりなんだ」

「それも記録しましょう」と職員。

続けて、大学宛てに研究会の代理人を名乗る人物から書面が届いた。

『神谷恒一氏は協力を表明しており、本計画への参加が期待される』。

神谷は立ち上がった。

「違う! 俺が同意したのは、被害防止のための限定的な情報提供だけです!」

第35話で送った書面が、まさにその証拠だった。

担当職員は原文と相手の案内を並べた。

「神谷さんの同意範囲を超える表現です。改めて訂正を求めます」

七瀬は神谷の手を軽く握った。

「ちゃんと書いておいてよかったね」

「……うん」

夕方、佐伯が学食にやってきた。

「お前ら、昼飯食った?」

「食欲ない」と神谷。

「じゃあ俺が二人分食う」

「気遣いが食欲に全部変換されてる!」

佐伯は唐揚げを飲み込み、真顔になった。

「でもさ、千人の結果を使って次は一万人、その次は海外って……最初の一回が成功したら止めにくいんだろ?」

「そう。だから今の一回を止めたい」と神谷。

「でも俺が会場に行けば、向こうの思うつぼだ」

玲奈が静かに言った。

「私は、過去の指示文と運用記録を全部提出する。もう、あの人たちの都合で誰かの気持ちを変えたくない」

七瀬は頷いた。

「私たちは現場に乗り込まない。できることを、記録と証言で積み重ねよう」


その夜、大学から学生向けの注意喚起が出た。

研究会の関連イベントについて、説明内容と退出の自由を確認するよう求めるものだった。

神谷は少しだけ安堵した。

だが、直後に知らない番号から写真が届いた。

大学の門を出る七瀬の後ろ姿。

撮影時刻は、つい数十分前。

『会場に来なければ、大切な人が困ることになります』。

神谷の指先が冷たくなった。

「……七瀬さん」

すぐに電話をかける。

「今どこ?」

「家。どうしたの?」

「君を撮った写真が送られてきた。脅迫も」

電話の向こうで息を呑む音がした。

「……怖い。でも、神谷くん。一人で会場に行かないで」

「行かない。今から相談室と警察に伝える」

「私も家族に話す。明日は一人で移動しない」

二人は通話を切らずに、必要な連絡を済ませた。

世界中の人間を操る力など、研究会にはまだない。

だが、一人の人間の自由を奪うために、脅迫という手段を選んだ。

神谷は画面を見つめた。

計画は、もう紙の上だけの話ではなかった。

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