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モテすぎる俺、好意が重すぎて人生崩壊しかけてる ~ その好意、全部バグです~  作者: レモンティー


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第四十二話:感情支配の女が、最後の命令を拒否した

朝倉玲奈が研究会から最後の指示を受け取ったのは、夜の九時だった。

『次回実証試験に参加せよ。

指定対象者の警戒心を低下させること』

続けて、添付ファイルが届く。

対象者一覧。

その中に、神谷恒一と七瀬の名前があった。

玲奈はスマホを握りしめた。

(……また、同じことをさせるつもりなんだ)

以前の自分なら、断れなかった。

能力を使った記録を公開すると脅され、生活を壊されるのが怖かったからだ。

でも、大学の会議室で七瀬が言った言葉を思い出す。

『今からでも、自分の気持ちは自分で決められる』

玲奈は深く息を吸った。

そして、返信した。

『参加しません。

今後、能力を使った業務にも協力しません』

送信ボタンを押した瞬間、手が震えた。

数秒後、電話が鳴る。

知らない番号。

玲奈は出なかった。

代わりに、これまでの契約書と指示文を保存し、相談していた窓口へ連絡した。

翌朝、大学の担当者から神谷たちに連絡が入った。

「朝倉さんが、新しい資料を提供してくれました」

神谷と七瀬は会議室へ向かった。

玲奈は前回と同じ席に座っていた。

ただ、今日は少しだけ表情が違う。

「……断ったんだ」

玲奈が言った。

「研究会の命令。もう能力を使わないって」

神谷は頷いた。

「……よかった」

玲奈は苦笑した。

「よくないよ。怖くて眠れなかった」

七瀬が答えた。

「怖くても、断ったんでしょ」

「……うん」

「それは大きいと思う」

玲奈は目を伏せた。

「ありがとう」

担当者が資料を開いた。

「朝倉さんの説明では、研究会は次のイベントで複数の能力者の反応データを組み合わせる予定だったようです」

神谷は眉を寄せた。

「……組み合わせる?」

「神谷さんの好意増幅に関するデータと、朝倉さんの感情誘導に関するデータを使い、参加者の反応を分析する計画です」

七瀬が言った。

「でも、能力そのものを再現できるとは限らないんですよね」

「はい。資料には誇張も含まれている可能性があります」

神谷は少し安心した。

だが、次のページを見て顔色が変わる。

『被験者への事前説明:一般的な商品体験会として案内』

「……参加者に、感情を操作する可能性を説明しないんですか」

担当者が頷いた。

「その点が問題です。現在、関係機関へ情報提供しています」

玲奈が口を開いた。

「私、最初は本当に人を助けたかった。緊張して話せない人を、少し楽にできるならって」

神谷は黙って聞いた。

「でも、いつの間にか、相手が嫌がってても『結果がよければいい』って考えるようになってた」

七瀬が静かに言った。

「結果がよくても、本人が選んでないなら問題は残るよ」

玲奈は頷いた。

「……うん」

神谷は少し考えた。

「朝倉さん。俺たちは、あなたをすぐに許せるわけじゃないです」

「分かってる」

「でも、今日の資料は助かりました」

玲奈の目が潤んだ。

「……それだけで十分」

会議が終わる頃、担当者の電話が鳴った。

数分後、担当者は険しい顔で戻ってきた。

「研究会の関連企業が、イベントを予定通り開催すると発表しました」

神谷は息を呑んだ。

「……中止しないんですか」

「現時点では、そのようです」

七瀬が資料を見つめた。

「じゃあ、まだ終わってない」

玲奈は小さく頷いた。

「私が断っても、別の方法を使うつもりなんだと思う」

神谷は拳を握った。

「……どうしたら止められるんだ」

担当者が答えた。

「私たちだけで判断せず、資料を関係機関へ渡します。イベント参加者の安全を最優先に」

神谷は頷いた。

玲奈は帰り際、七瀬へ言った。

「私、あなたみたいになりたかったのかもしれない」

「私みたい?」

「誰かの気持ちを変えなくても、自分の言葉で話せる人に」

七瀬は少し考えた。

「私だって、いつも上手く話せるわけじゃないよ」

そして、小さく笑った。

「好きな人の前では、特にね」

神谷が振り向く。

「……え?」

七瀬は顔を赤くした。

「今のは聞かなくていい!」

玲奈が初めて、声を出して笑った。

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