↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モテすぎる俺、好意が重すぎて人生崩壊しかけてる ~ その好意、全部バグです~  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/50

第二十七話:神様に恋愛相談したら、恋愛経験ゼロだった

その夜、神谷は夢の中で白い空間に立っていた。

目の前には、見覚えのある抽選箱。

そして、やけに機嫌のよさそうな神様。

「久しぶり。最近、調子よさそうだね」

「おかげさまで、命の危険は少し減りました」

「それはよかった」

「ただし恋愛方面で新しい問題が発生しました」

神様は身を乗り出した。

「恋愛相談!?」

「食いつき方が怖い」

「だって面白そう」

「人の人生を娯楽にしないでください」

神様は指を鳴らし、空中に大きな文字を浮かべた。

『恋愛相談窓口 神様直営』

「開設したの、今ですよね?」

「細かいことは気にしない」

神谷はため息をついた。

七瀬のことを話した。

能力が効かないこと。

それでも七瀬が『好きかも』と言ってくれたこと。

そして今日、何の必要もないのに手を繋いだこと。

神様は真剣な顔で頷いていた。

「なるほど。つまり相手の女性が、あなたに好意を抱いている可能性が高い」

「本人が好きかもって言ったんですよ」

「重要な証言ね」

「推理する余地ある?」

神様は空中に図を描いた。

『好意→交際→結婚→老後』

「展開が速すぎる!」

「効率的でしょう?」

「人生をフローチャートで処理しないで!」

神様は少し考えた。

「じゃあ、花束を千本贈る」

「大学生の予算を考えてください」

「星を一個あげる」

「物理法則も考えてください」

「じゃあ、愛の証として特級能力をもう一個――」

「絶対いらない!」

神谷は頭を抱えた。

「神様、もしかして恋愛経験ないんですか?」

神様の笑顔が止まった。

「……神は、そういう俗世の尺度では測れないの」

「ないんですね」

「数千年、忙しかったの」

「長い言い訳だな!」

神様は咳払いした。

「でもね。ひとつだけ、分かることがある」

空中の図が消えた。

「あなたの能力は、他人の好意の芽を大きくする。だから、誰かに好かれると、どうしても自分の力を疑う」

神谷は黙った。

「七瀬さんは干渉耐性を持っている。少なくとも、あなたの『モテモテ』で彼女の気持ちを作ったわけじゃない」

「……はい」

「でも、それで彼女の気持ちを保証できるわけでもない。人の気持ちは変わるから」

神谷は顔を上げた。

「保証、ですか」

「好きだと言われたら、ずっと好きでいてもらえると思いたい。だけど、能力があってもなくても、そんな約束はできないの」

神様は珍しく静かな声だった。

「だから、相手に選んでもらい続けるしかない。あなたも、相手を選び続けるしかない」

神谷は少し考えた。

「……それ、最初から言ってくれればよかったのに」

「最初から恋愛相談されるとは思わなかったから」

「恋愛能力を配った張本人ですよね!?」

神様は笑った。

その笑顔が、ふっと消える。

「それと、気をつけて」

白い空間の端に、薄い影が浮かんだ。

「あなたたちに接触した『感情支配』の持ち主。あの力は、他人の気持ちに優先順位をつけることができる」

「七瀬さんにも効きかけました」

「そう見えたのね」

神様は慎重に答えた。

「でも、外から作られた感情と、自分の中にあった感情が刺激されたことは、区別しにくい」

「……つまり?」

「彼女が嫉妬したからといって、全部が支配のせいとは限らない。逆に、何も影響がなかったとも言い切れない」

神谷は頷いた。

「本人の言葉を聞くしかないんですね」

「そういうこと」

神様は再び笑った。

「では、最後に恋愛の必勝法を授けましょう」

「まだあるんですか」

「毎朝、相手の前で愛の詩を朗読する」

「絶対やらない!」

白い光が広がった。

目を覚ますと、朝の七時だった。

スマホに七瀬からメッセージが届いている。

『昨日、楽しかった。

また行こう』

神谷はしばらく画面を見つめた。

そして、短く返信した。

『俺も楽しかった。

また行きたい』

数秒後、既読がつく。

『よろしい』

神谷は笑った。

神様の必勝法より、ずっと効果がありそうだった。

大学へ向かう電車の中、神谷は神様との会話を思い出していた。

『相手に選んでもらい続けるしかない』

言葉としては簡単だ。

けれど、どうすれば相手の自由を尊重できるのか、具体的な正解はない。

七瀬と合流すると、神谷は夢のことを話した。

「……神様に恋愛相談?」

「笑うなよ」

「笑ってない」

「口元が完全に笑ってる!」

七瀬はとうとう吹き出した。

「で、何て言われたの?」

「花束千本と、星を一個贈れって」

「星?」

「天体のほう」

「神様、規模感おかしいね」

神谷は頷いた。

「でも、一つだけまともなこと言ってた。人の気持ちは保証できないって」

七瀬の笑みが少し和らぐ。

「それはそうだね」

「……怖くない?」

「怖いよ。好きだと思ってても、いつか変わるかもしれない」

七瀬は足元のタイルを見た。

「でも、変わるかもしれないからって、今の気持ちをなかったことにはしたくない」

神谷は返事を探した。

七瀬は先に歩き出す。

「ほら、講義遅れるよ」

「……うん」

神谷はその隣に並んだ。

「そういえば、神様が愛の詩を朗読しろって」

「やめてね」

「即答!?」

「講義室でやったら、私が退学届を出す」

「俺じゃなくて七瀬さんが!?」

七瀬は笑った。

神谷も笑った。

二人の間にあるものは、まだ名前のつかない約束だった。

けれど、昨日より少しだけ、確かなものになっていた。

七瀬は講義室に入る直前、神谷を呼び止めた。

「そういえば、神様って何歳なの?」

「知らない。数千年は忙しかったって言ってた」

「じゃあ、恋愛相談の経験は豊富なんじゃない?」

「相談を受けた経験じゃなくて、恋愛した経験がゼロらしい」

七瀬は真顔で考えた。

「……経験のない人が断言する助言ほど危ないものはないね」

「それ、本人に聞かせたい」

神谷は笑ったが、七瀬は少し真面目な顔に戻った。

「でも、神様の言うことが全部間違ってるわけでもないと思う」

「うん」

「私は、神谷くんのことをまだ全部知ってるわけじゃない。嫌なところだって、これから見つけるかもしれない」

神谷は頷いた。

「俺も、七瀬さんに幻滅されることはあると思う」

「もう何回かしてるよ」

「早い!」

七瀬は笑う。

「でも、嫌なところが一個あったら全部終わり、ってわけでもないでしょ」

神谷は少し考えた。

「……そうだな」

七瀬は教室の扉を開けた。

「じゃあ、まず今日の講義をちゃんと聞くこと。寝てたら減点」

「恋愛に成績表あるのかよ!」

「あるよ。私の中には」

神谷は慌ててノートを取り出した。

だが、その直後。

別の番号から、一通のメッセージが届いた。

『あなたの隣の女性は、本当に自由意思でそこにいますか?』

神谷の笑顔が消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。