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モテすぎる俺、好意が重すぎて人生崩壊しかけてる ~ その好意、全部バグです~  作者: レモンティー


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第十五話:必要な距離、必要な接触

翌日。

講義室。

「……」

神谷は、いつもより少しだけ早く来ていた。

理由は簡単だ。

(まだ、少ない)

人が。

視線が。

“引き寄せ”の密度が。

「珍しいじゃん」

声。

振り向く。

七瀬が入ってくる。

「早いね」

「回避行動だ」

「ガチ勢だね」

「命かかってるからな」

「重い理由やめて」

七瀬は隣に座る。

自然な動き。

「で?」

「……」

「今日もやばそう?」

神谷は少しだけ周囲を見る。

まだ平和だ。

だが――

「時間の問題だな」

「だよね。時限爆弾だし」

「人を爆弾扱いするな」

「爆発するのは周りだけどね」

笑えない。

そして。

何も言わずに――手を差し出した。

「……は?」

「予防」

「早い早い早い」

「ワクチンみたいなもん」

「副作用デカすぎない?」

「手つなぎで済むなら安いでしょ」

「倫理が軽い」

ぐっと距離を詰めてくる。

「先に抑えたほうが楽じゃない?」

「それはそうだけど」

「じゃあ決まり」

ぱしっ。

迷いなく手を取られる。

「ちょっ――」

その瞬間。

――すっ

周囲の“ざわつき”が一段落ちる。

視線が、流れる。

引っかかりが消える。

「……」

神谷はゆっくり息を吐いた。

「……ほんとに効くな」

「でしょ。即効性あり」

「市販できそう」

「商品名どうする?」

「やめろ」

七瀬は平然としている。

「ジュースのためだからね」

「動機が安い」

「でも効果は高い」

「そこだけ優秀なんだよな」

「褒めてる?」

「半分な」

――講義中。

「……」

問題は。

(この状態、どうすんだ)

手。

繋がったまま。

机の下。

誰にも見えない。

でも――

「……」

意識するなと言うほうが無理だ。

七瀬は普通にノートを取っている。

全く気にしていない様子。

(なんで平気なんだよ)

その時。

きゅ、と。

少しだけ指が動いた。

「……!」

思わずそっちを見る。

七瀬は前を向いたまま。

小声で。

「力抜いて」

「……」

「ガチガチすぎ。バレる」

「……誰に」

「机に」

「机!?」

「ギシギシ言いそう」

言われた通り、少し力を抜く。

不思議と、楽になる。

(……慣れてきてるのか?)

それはそれで嫌だ。

(いやちょっと待て)

(適応してるの怖いんだけど)

――講義終わり。

手を離す。

その瞬間。

ざわっ

空気が戻る。

「ねえ神谷くん!」

「さっきの課題なんだけどさ!」

「今ちょっといい?」

(……早い!復帰早い!)

「はいはいストップー」

七瀬が間に入る。

自然な動きで、また手を取る。

――すっ

静まる。

「……」

「ほら」

七瀬が言う。

「再起動完了」

「機械じゃないんだけど俺」

「でも挙動はそれっぽいよ」

「否定できないのが腹立つ」

――移動中。

廊下。

「……なあ」

「なに」

「これさ」

ちらっと手元を見る。

「ずっとは無理だろ」

「まあね。腕もげるし」

「そこまでいかない」

「じゃあどうする」

七瀬は少し考えて。

「ルール決める?」

「ルール?」

「“やばくなったら繋ぐ”」

「ざっくりだな」

「じゃあ細かくする?」

少しだけニヤッと笑う。

「私判断でいい?」

「ダメだろ絶対」

「えー」

「絶対面白がるだろ」

「バレた?」

「バレるわ」

七瀬はくすっと笑う。

でも、少しだけ真面目な声で言う。

「でもさ」

「……」

「一人で抱えるよりマシでしょ」

神谷は黙る。

否定できない。

「……ああ」

短く答える。

そのとき。

前から、数人の女子グループが歩いてくる。

視線が――合う。

(来る)

反射的に距離を取ろうとする。

でも。

その前に。

ぎゅ、と。

七瀬の手が、しっかり握られる。

――すっ

波が引く。

女子たちは、そのまま通り過ぎる。

何もなかったみたいに。

「……」

神谷は少しだけ目を見開いた。

「今の」

「完全にアウト一歩手前」

「ギリギリすぎるだろ」

「危険運転だね」

「免許返納したい」

「持ってないでしょ」

「……助かった」

七瀬は軽く言う。

「でしょ」

少しの沈黙。

そして。

神谷はぼそっと言う。

「……これ、あれだな」

「なに」

「見た目だけだと」

七瀬を見る。

「完全にカップルだな」

一瞬。

間。

七瀬は、きょとんとして――

「今さら?」

「いやまあそうだけど」

「周りから見たらずっとそうだよ」

さらっと言う。

「……マジか」

「マジ。多分噂出てる “あの二人ずっと手繋いでる”って」

「!!」

そのまま歩く。手は、まだ繋がったまま。

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