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モテすぎる俺、好意が重すぎて人生崩壊しかけてる ~ その好意、全部バグです~  作者: レモンティー


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第十話:遮断

「……別のがいる」

神谷の声は低かった。

さっきまでの“残り”じゃない。

明確に違う。

“個体”だ。

七瀬は周囲を見る。

「どこ」

「わからない」

即答。

「でもいる」

「最悪」

七瀬は短く言う。

「で?」

「え?」

「どうするの」

神谷は言葉に詰まる。

そのとき。

――ピリッ

また来る。

今度ははっきり強い。

「……っ!」

思わず肩が揺れる。

七瀬が一歩近づく。

「手」

「……」

神谷は一瞬だけ見る。

差し出された手。

“安全装置”。

(これに触れれば止まる)

確実に。

でも。

「……ダメです」

「は?」

「頼ってたら終わる」

七瀬が少しだけ目を細める。

「珍しくまともなこと言うじゃん」

「褒めてないですよねそれ」

「褒めてない」

即答。

神谷は深く息を吸う。

「……自分でやります」

七瀬は手を引っ込める。

「いいよ」

あっさり。

「死にそうになったら言って」

「基準が怖い」

「大丈夫、まだ余裕ある」

「どこ見て言ってるんですか」

そのとき。

――視線

今度ははっきり“来た”。

「……あ」

遠く。

通行人の一人。

立ち止まる。

ゆっくり、こっちを見る。

「……当たりですね」

「当たりだね」

七瀬は壁に寄りかかる。

「ほら、実験開始」

「軽いなぁ……!」

女が一歩、近づく。

まだ遠い。

でも。

(もう反応してる)

神谷は目を閉じる。

(整理しろ)

(今の状態)

・距離関係なく反応

・弱いけど拡散してる

・触れれば固定される可能性あり

・七瀬で遮断可能

(つまり)

「……蛇口か」

「なに」

「これ、出てるんじゃなくて」

目を開く。

「出しっぱなしなんだ」

七瀬は少しだけ頷く。

「近いね」

「じゃあ――」

神谷は自分の胸に手を当てる。

「閉めればいい」

女がもう一歩近づく。

視線が絡む。

“引かれる感覚”が強くなる。

(来てる)

(でもまだ軽い)

神谷は意識を内側に向ける。

(どこから出てる)

(感情?)

(違う)

(もっと手前)

喉が詰まるような違和感。

心臓の少し上。

「……ここか」

小さく呟く。

「見つけた?」

七瀬が聞く。

「たぶん」

でも。

次の瞬間。

――ドクン

強く脈打つ。

「……っ!」

一気に“流れ”が強くなる。

女の足が止まる。

そして。

「……見つけた」

小さく呟く。

(まずい)

神谷は理解する。

(これ、意識したら強くなるタイプだ)

「どうしたの」

「逆効果です!」

「バカじゃん」

「今まさに実感してます!」

女が笑う。

さっきとは違う。

まだ“軽い狂気”。

でも確実に濃くなっている。

(止めろ)

(閉じろ)

神谷は歯を食いしばる。

(“出すな”じゃない)

(“流すな”だ)

意識を変える。

押し込むんじゃない。

流れを止める。

“通さない”。

「……」

呼吸を落とす。

一つ。

二つ。

(流れる前)

(その手前)

(ここで――)

止める。

「……止まれ」

小さく呟く。

その瞬間。

――すっ

何かが、引いた。

「……あ」

女の動きが止まる。

視線が、わずかにブレる。

七瀬が目を細める。

「……今の」

神谷は動かない。

(維持しろ)

(ここを保て)

女が首をかしげる。

「……あれ?」

さらに一歩。

でもさっきより遅い。

(効いてる)

「……いける」

神谷は確信する。

でも。

甘かった。

――ドクン

もう一度。

強く脈打つ。

「っ……!」

集中が切れる。

一瞬で“流れ”が戻る。

女の目が、再び強くなる。

「……やっぱり」

七瀬がぼそっと言う。

「簡単にはいかないね」

「……ですね」

神谷は苦く笑う。

でも。

さっきと違う。

(止め方はわかった)

(あとは――)

「精度か」

もう一度、構える。

今度は。

もっと深く。

「……次で止めます」

「フラグ立てたね」

「やめてください」

女がもう目の前まで来る。

手が伸びる。

(来る)

神谷は目を閉じる。

今度は逃げない。

(触れられる前に)

(止める)

呼吸。

心拍。

流れ。

全部を揃える。

「……今だ」

七瀬と手を握って全てが途切れた感触を思い出した。

あの感覚…

その瞬間。

“流れ”を、切った。

――静寂。

女の手が、止まる。

あと数センチのところで。

「……え?」

女が呟く。

さっきまでの熱が、消えている。

完全じゃない。

でも。

確実に“薄い”。

神谷はゆっくり目を開ける。

「……止まった」

七瀬が小さく言う。

「半分くらいね」

「十分です」

神谷は息を吐く。

「自力で止めた」

女は困惑している。

「……なんで」

「さっきまで……」

そして。

一歩、下がる。

「……ごめん」

デジャヴみたいな光景。

でも今回は違う。

“切られた”のは外じゃない。

内側だ。

女はそのまま去っていく。

静かに。

普通に。

神谷はその場に立ち尽くす。

「……できた」

七瀬は壁から離れる。

「まあ合格」

「評価軽くないですか?」

「死んでないから合格」

「基準怖い!」

でも。

七瀬は少しだけ、ちゃんと見る。

「……でも」

「はい」

「それ、かなり疲れるでしょ」

神谷は苦笑する。

「バレました?」

「顔」

「最悪だ」

七瀬は一瞬だけ考える。

「じゃあ結論」

「はい」

「基本はあなたが止める」

「はい」

「無理なときだけ私」

「……はい」

神谷はゆっくり頷く。

「役割分担、ですね」

「そういうことになるね」

少しの沈黙。

風が吹く。

さっきまでの異常が嘘みたいに静か。

神谷は空を見る。

「……やっとスタートラインか」

七瀬は横でぼそっと言う。

「遅いけどね」

「厳しい」

でも。

少しだけ笑っていた。

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