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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第4部 北回り

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総社〜坂出〜松山

2029年10月8日


 総社市の静かなコインパーキングを朝早くに発った俺たちは、一気に南へと針路を取った。

 視界に飛び込んできたのは、瀬戸内海を跨ぐ巨大な建造物――瀬戸大橋だ。新車エブリイにとって初の海上ハイウェイ。ジムニーに比べて横風の影響を受けやすい箱型車だが、しっかりとハンドルを握り、海を渡って四国・香川県の坂出さかいで市へと上陸した。

 早朝に出発した甲斐あって、坂出に到着したのはちょうどお昼時。

 香川といえば、何が何でも「うどん」である。目星をつけていた本場のうどん屋の暖簾をくぐるが、当然、店内はペット同伴禁止のコンプライアンス。俺は3匹にエブリイの涼しい荷室で少しの間待機してもらい、単身店へと滑り込んだ。

 注文したうどんをツルリと口に運ぶ。

「――! なんだ、この弾力は」

 噛み切ろうとする歯を押し返してくるような、凄まじく強いコシ。出汁の旨味と相まって、喉越しは文句なしの最高評価(トリプルA)だ。本場の実力を胃袋でしっかりと検収し、大満足で店をあとにした。

 コインパーキングへと戻り、お利口に待っていたボス、エルヴィス、こまの3匹に軽く水分補給をさせる。

「よし、ここから一気に距離を稼ぐぞ」

 エブリイのスライドドアを閉め、俺はアクセルをぐっと踏み込んだ。

 西へ向かってハイウェイを遮二無二走る。銭形の砂絵で名高い観音寺かんおんじ市を掠め、四国屈指の工業都市・新居浜にいはま市を横目に通り過ぎる頃には、車窓から差し込む光が穏やかなオレンジ色に染まり始めていた。

 夕方。

 気がつけばエブリイのフロントガラスの向こうには、伊予の古都・松山まつやま市の街並みが広がっていた。

 総社からの大移動、走行距離約180キロ。だが、広々としたコックピットとデニムマットの上で終始のんびり過ごした3匹のおかげで、新車のロングランは極めて健全な黒字運行のまま、四国路のハイライトへと突入するのだった。

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