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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第4部 北回り

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広島〜北広島

2029年10月3日


 午後。広島市内からじわじわと標高を上げていくと、窓から入る風が明確にひんやりとした山の空気に変わった。新生エブリイの初陣として、俺たちがまず滑り込んだのは、北広島町の「道の駅 舞ロードIC千代田」だ。

 車を降りて見上げると、この道の駅の屋根には、度肝を抜かれるほど巨大な「太鼓」のオブジェが据え付けられていた。

「……なんで、道の駅に太鼓がついているんだ?」

 この地域にどんな歴史的背景があるのか、元経理マンの俺の脳内データベースを検索してもサッパリわからなかった。まあ、世の中には数字で割り切れない謎も多い。

 深く考えるのはやめにして、まずはボス、エルヴィス、こまを車外へ降ろし、道の駅の周辺をのんびりと散歩させる。十月の山の空気は澄んでいて、歩いているだけで長距離運転の凝りがほぐれていくようだ。

 お散歩の検収を無事に終え、一度三匹をエブリイの快適なクッションの上へ戻す。

 それから、俺は単身で道の駅の物産館へと向かった。

 そこで見つけたのが、山あいの街ならではの魅力的な食材――ジビエ肉だった。冷凍コーナーに並ぶ、地元産の新鮮なイノシシ肉と鹿肉。

「よし、これはいずれあいつらの『特別ボーナス』にしてやるか」

 我が家の弾丸たちの喜ぶ顔が浮かび、迷わず購入して車内の冷蔵ボックスへ収めた。

 運転席へ戻り、後部座席のスライドドアを開けてみる。

「おい、良い肉が手に入ったぞ」

 声をかけたが、返ってきたのは「フゴーッ……フゴーッ……」という、車内に反響する重低音の合唱だけだった。エブリイの広々としたフラットマットの上で、三匹は文字通り雑魚寝の状態で爆睡している。

 新しい相棒の乗り心地がよほど快適だったのか、それとも山の散歩で心地よく疲れたのか。

 安心しきった三匹のいびきを聞きながら、俺はエブリイのキーを回し、次なる目的地へと静かに車を走らせた。

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