呉〜広島
2029年10月3日
納車の翌日、俺は朝一番でエブリイを走らせ、広島市内にある大型ホームセンターの資材館へと滑り込んだ。
目的は、この広大な荷室の「内装工事」だ。軽ワンボックスの床は、そのままだと犬たちの爪が滑って踏ん張りが利かない。俺はプロ用の滑り止めマットと、厚手のクッションを文字通り大量に買い込んだ。
荷室一面に隙間なくマットを敷き詰め、3匹がそれぞれの定位置で顎を乗せられるよう、クッションをバランスよく配置する。さらに、ボス、エルヴィス、こまの「カリカリ(ドッグフード)」や小分けにしたおやつ、お気に入りの引っ張りっこ用おもちゃといった大量の物資を、使い勝手のいい位置へシビアに収納していった。
「よし……これで『安村号』の初期セットアップは完了だ」
一度呉のマンションへ戻り、自分の着替えを詰めたボストンバッグを助手席に放り込む。
「おい、野郎ども。待たせたな。出発だ!」
声をかけると、リビングでウズウズしていた3匹が、新車のスライドドアからなだれ込むように乗り込んできた。ジムニーの時のような窮屈さは微塵もない。各自が広々としたクッションの上に陣取り、早くも満足げに鼻を鳴らしている。
午前十時、俺たちは慣れ親しんだ呉のマンションをあとにした。
まずは広島市内の大型スーパーに立ち寄り、俺用の惣菜や飲み物、道中の消耗品など、足りない流動資産(生活物資)をテキパキと購入して冷蔵ボックスへ収める。
バックミラー越しに、のびのびとくつろぐ3匹の姿を確認し、俺はアクセルを優しく踏み込んだ。
行く先は、すっかり秋の気配が色濃くなっているであろう、山あいの郷――北広島町。
新生エブリイの滑らかなエンジン音が、これから始まる大旅へのプロローグのように、秋晴れの空へ心地よく響いていた。




