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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第3部 グランドサークル大縦走

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日生

2029年7月18日


 俺たちは岡山県備前市の日生ひなせに入った。

 日生は瀬戸内でも有数のパグ――いや、牡蠣の産地として有名だ。フォロワーさんが教えてくれた情報によると、この地域では四月から七月の前半にかけて、大ぶりで濃厚な「岩牡蠣」が出回るらしい。もしかしたら滑り込みで間に合うか、と淡い期待を抱きながら、俺たちはジムニーを「五味の市」へと走らせた。

 しかし、市場で話を聞くと、今年の岩牡蠣はつい数日前に出荷が終わってしまったとのこと。タッチの差でリベンジならず、実に残念だったが、そこはすぐに気持ちを切り替える。この市場は牡蠣だけでなく、瀬戸内の新鮮な地魚が美味いことでも有名だとフォロワーさんから聞いていたからだ。

 駐車場でジムニーを停め、ボス、エルヴィス、こまを連れて周辺を散歩させる。

 活気ある市場の周りには家族連れも多く、鼻ペチャ三兄弟のユーモラスな姿を見つけると、小さな子どもたちが嬉しそうに近づいてきた。

「わあ、可愛い! 写真撮ってもいいですか?」

 親御さんからの頼みに、「どうぞ」と快く応じる。大人しくお座りをした三匹と子どもたちの記念撮影は、旅先ならではの温かい一コマだった。

 しばらく五味の市をブラブラしたあと、お隣にある「海の駅しおじ」に向かい、名物のバーベキューコーナーで遅めの昼食にすることにした。

 目の前の網の上で、獲れたての新鮮な地魚やエビがジューシーな音を立てて焼き上がっていく。香ばしい磯の匂いが立ち込めると、足元でさっそく「おねだり検問」が始まった。

 だが、今回は三匹の反応がいつもと違っていた。

 焼き上がった魚をじっと見つめ、口元から滝のようなよだれを垂らして欲しがるボスとこま。しかし、次男のエルヴィスだけは、魚の匂いには全く興味がないらしく、フイッとそっぽを向いてしまっている。どうやらあいつは、完全な「肉派」らしい。

 味付けをしていない魚の切れ端を器に入れてやると、ボスとこまが猛烈な勢いでハグハグと突き進む。そのすぐ横で、エルヴィスは「フアァ~」と退屈そうに大きなあくびをもらしていた。三者三様の食生活のバランスに、思わず笑みがこぼれる。

 お目当ての牡蠣には振られてしまったけれど、お腹も心も大満足の一日だった。日生、またいつか季節を変えて、今度は冬の「カキオコ」の時期にでも絶対にまた来たいな。

 そんなことを思いながら、俺は再びジムニーのキーを回した。

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