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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第1部 いい日旅立ち・西へ

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柳井〜周南

2027年4月8日


 徳山港の駐車場にジムニーを停め、受付で乗船券とボスの手荷物料金を支払った。ボスをキャリーバッグに押し込み、外から見えないよう薄手の布を被せる。

「少しの間だけ我慢してくれよ」

 バッグの隙間から不満げな鼻息が漏れた。

 フェリーに揺られること数十分、大津島へと渡った。下調べでは、目的地の回天記念館はペット同伴不可だが、島内の屋外遺構は散策できるとのことだった。記念館は諦め、回天発射訓練基地跡などを巡ることにした。

 キャリーバッグからボスを解放し、リードを繋ぐ。だが、瀬戸内の離島特有の起伏に富んだ道は、想像以上に過酷だった。

 事前に調べた情報では「一周三十分程度」と書かれていたが、それは人間の足で迷いなく歩いた場合の話だ。ボスは数歩進んでは立ち止まり、見たこともない草木の匂いを嗅ぐ「クン活」に没頭して、一向に前へ進まない。

 結局、三十分の予定が、二時間近くかかった。

 すっかり汗ばんだ体でボスをバッグに格納し、帰りのフェリーへ乗り込む。徳山港へ戻り、運転席に深く身を沈めると、どっと疲労が押し寄せてきた。

 ボスはとっくに夢の中だった。

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