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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第1部 いい日旅立ち・西へ

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周防大島〜柳井市

2027年4月7日 午前


 周防大島を抜け、ジムニーは柳井やないへと向かった。

 車を止め、白壁の古い街並みをぶらぶらと歩く。ふと見上げると、軒先に無数の金魚ちょうちんが、春の柔らかな風に揺れていた。白と赤のコントラストが、どこか現実離れしていて美しい。

 足元のボスも、その色彩に目を奪われたのか、「ふんっ、ふんっ」と鼻息を荒くしている。綺麗だなぁ、とでも感動しているのかと思いきや――。

 短い後ろ足で立ち上がったかと思うと、風に揺れる金魚めがけてパクつこうと跳ね上がった。

「おいっ、待て。食い物じゃない」

 民芸品を噛みちぎられてはたまらない。俺は慌ててボスの胴体を抱き上げ、引き離した。

 腕の中でなおも金魚を見つめ、舌をペロリと出す相棒に、俺は深く息をついた。

 風情もへったくれもないが――それでも、胸のつかえが少し軽くなった気がした。

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