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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第1部 いい日旅立ち・西へ

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岩国〜周防大島

2027年4月6日 午後 


 きらめく海沿いの道を走り、大島大橋を渡って周防大島へと向かった。

 島に着いてから知ったのだが、ここはみかんスイーツが有名らしい。ただ、俺は昔からみかんの酸味が苦手だ。琴音はよく美味しそうに食べていたが、俺はほとんど口にしなかった。

「人生の半分は損しとるね」

 呆れたような彼女の声が、潮風に混じって耳の奥に蘇る。

 店を見て回っていると、犬用のみかんジュレが目に留まった。

「ほら、お前の分だ」

 ボスの前に置くと、待ってましたと言わんばかりに食いついた。短い鼻を鳴らしながら、夢中で皿を舐めている。

「そんなに美味いんか」

 俺にはその美味さがよく分からない。

 綺麗に食べ終えたボスは、満足そうにお尻をぷりぷりと振っていた。

 その場を離れ、近くの喫煙所へ向かう。胸ポケットから赤いマルボロを取り出し、ライターで火をつけた。

 紫煙を吐き出しながら、どこまでも穏やかな海を見る。瀬戸内海は、今日も驚くほど静かだった。足元では、ボスが退屈そうに大きなあくびをしていた。

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