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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第3部 グランドサークル大縦走

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三次〜庄原

 二〇二九年七月四日。


 三次駅近くのコインパーキングで夜を明かした俺たちは、フォロワーから熱心に勧められていた『湯本豪一記念日本妖怪博物館(三次もののけミュージアム)』を目指した。だが、現地に着いてみると、あいにくペットの同伴は禁止とのこと。

 看板を前に肩をすくめ、俺は近くの『もちのえき』へ進路を変えた。店内に漂う香ばしい匂いに誘われ、みたらし団子を頬張る。

 すると、足元から「フゴ、フゴ」と熱い視線が突き刺さった。ボス、エルヴィス、こまの三匹が、よだれを垂らしてこちらを見上げている。

「……欲しそうな顔をするな」

 どう見ても、こいつらにとってこのタレは味が濃すぎる。成分的にコンプライアンス違反だ。絶対にやれん。俺は心を鬼にして、視線を逸らした。

 三次をあとにして、ジムニーを庄原方面へと走らせる。午後に到着すると、まずは国兼池の眺めが素晴らしい『里山の駅 庄原ふらり』へと立ち寄った。

 車を停めて三匹と散歩していると、ふいに声をかけられた。

「安村さんですか? フォロワーです!」

 なんと、旅先でフォロワーと遭遇するという幸運。記念の写真撮影を求められ、俺は少し照れくささを感じながらも、快く応じた。こういう繋がりも、旅の醍醐味の一つだ。

 夕方になり、少し疲れが溜まってきたので、庄原にある『さくらの湯』へと向かう。温泉に浸かって身体を休めたいところだが、当然ながらここは補助犬以外は入場不可だ。

 入り口の掲示板を見て、ふと考える。身体障害者補助犬といえば、訓練されたラブラドールレトリバーなどが代表的だ。俺が連れているこいつらのような、食い意地の張ったフレブルやパグにそれを求めるのは、そもそも無理がある話だ。

 だが、だからといってこの愉快な仲間たちを捨ててまで温泉に入る気など、毛頭ない。

「……まあ、いいか」

 俺は苦笑し、エアコンを最強に設定したジムニーに三匹を戻した。防犯ロックを二重にかけ、三十分だけ……と心に決めて、俺は足早に施設へと向かった。

 入浴を終え、火照った身体でジムニーに戻ると、車内には再び地鳴りのような特大のいびきが響き渡っていた。

「本当に、お前らはどこでも寝れるな」

 その間抜けで愛おしい寝顔に、思わず笑みがこぼれる。俺はスマホを取り出し、再びその様子を録画した。さて、これをアップすれば、またフォロワーの連中が喜ぶだろう。

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