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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第2部 東回り

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呉市〜東広島

2029年7月1日


 本格的な初夏の暑さが、容赦なく押し寄せる季節になった。

 じっとりとした湿気に包まれた呉の街を這い出し、エアコンを効かせた自宅のリビングで、俺は大判の紙地図を広げていた。

 SNSのアカウント名を『おっさんと愉快な仲間たち』に変えてから、初めての夏が来る。足元を見れば、ボス、エルヴィス、こまの三匹が、涼しいフローリングに腹をぴったりとつけて、こちらを退屈そうに見上げている。「親父、次はどこへ行くんだ」と、その濁りのない瞳が語っているようだった。

「よし、作戦会議を始めるぞ」

 愛用のペンを握り、地図の上にドライビングスケジュールを書き込んでいく。

 呉を出発し、東広島、安芸高田、世羅、三次、庄原へ。そこから府中、神石高原を抜けて岡山・新見の山中へと入る。真庭、高梁、津山、美作と中国山地の深い歴史を縦走したあとは、一気に兵庫の朝来、丹波へ。そこから加古川へと南下し、たつの、相生、赤穂の播磨の海へ滑り込む。終盤は備前、玉野、笠岡と瀬戸内沿いを西へ走り、三原須波を経由して、再び我が家へと還ってくる――。

 我ながら、かなりの大回りだ。初夏の山道は険しいし、何より夏場は犬たちの熱中症に細心の注意を払わなければならない。だが、だからこそジムニーで挑む価値がある。

「よし。ざっくりとだが、まとまったな」

 引き直したルートを指先でなぞりながら、俺は小さく呟いた。

 ジムニーのガソリンは満タン、三匹のカリカリと、お詫び用の高級ジャーキーのストックも申し分ない。

 明日は記念すべき第一歩だ。まずは東広島に向けて、ジムニーのエンジンに火を入れよう。

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