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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第2部 東回り

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高松〜丸亀

2029年4月15日


 今日は、俺の五十五歳の誕生日だった。

 朝、ジムニーの中でSNSを開くと、通知の嵐に驚かされた。全国のフォロワーさんから、あふれんばかりのお祝いメッセージが届いている。五十五年の人生で、これほど多くの人から祝福された記憶はない。不器用な指先で、一人ひとりに「ありがとうございます」と返信する。

 肝心の三匹といえば――「今日は父ちゃんの誕生日だぞ」と告げても、「フガッ」と鼻を鳴らしただけ。特に長男のボスは、過去の九州旅で食べた最高級の馬刺しの記憶が鮮明らしく、「親父、今年はどんな肉が出てくるんだ?」とばかりに、朝から目をランランと輝かせて俺を監視している。誕生日、もらう側だと思っているらしい。

 ジムニーを走らせ、高松から丸亀市へと入る。

 丸亀といえば丸亀城、そして思い出深い丸亀競艇場だ。若い頃、この近くのレースで手堅く万舟券を射止めた記憶が蘇る。ナイター照明のそびえる競艇場を横目に、俺はハンドルを切った。

 到着した丸亀城は、驚くべきことに桜が満開の真っ盛りだった。

 スリングから下ろし、木の下を歩かせる。ひらひらと舞い落ちたピンクの花びらが、ボス、エルヴィス、こまの低い鼻先にピトッと張り付いた。

「ぶしゅん!」「ブフッ!」

 違和感に耐えかねた三匹が、一斉にくしゃみを連発する。その間抜けで愛おしい一瞬を逃さずシャッターを切ると、スマホの「いいね」が瞬く間に跳ね上がった。

 さて、明日の行き先は決めている。愛媛県今治市だ。

 瀬戸内の島々を繋ぐ「しまなみ海道」を渡り、ここから一気に、俺たちの出発点である広島へと帰路につくことにする。

 三匹を乗せたジムニーのギアを力強く入れ、俺は西へと車を走らせた。

 五十五歳の旅路は、まだまだここからだ。

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