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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第2部 東回り

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尾道〜福山

2029年4月7日


 今日は福山市内へとやってきた。ジムニーを転がし、まずは「ばら公園」へ。五月の満開にはまだ少し早かったが、手入れされた園内には早咲きの品種が誇らしげに咲き誇り、甘い香りが漂っている。

 スリングから下ろした三匹を芝生に解き放つと、近くで遊んでいた子供たちが「あっ、見て! カワイイ!」と屈託のない笑顔で駆け寄ってきた。

 かつて、会社と家の往復ばかりで、世間に対して心のシャッターを降ろしていた俺が、こうして見知らぬ人々と交流し、世界の温かさに触れている。三匹が運んでくれたこの穏やかな時間は、俺にとって何物にも代えがたい財産だった。

 午後は少し足を伸ばし、鞆のとものうらへ向かう。

 瀬戸内の潮風が香るこの古い港町は、まるで江戸時代から時が止まったようなレトロな街並みが広がっている。古い常夜燈の前に立つ三匹の横顔は、映画のワンシーンのように絵になっていた。

 夕方、福山駅近くで名物の「ごまそば」を堪能する。

 当然、蕎麦屋には入れないので、三匹にはエアコンを効かせたジムニーでお留守番。喉越しの良い冷たい麺が、今日一日の心地よい疲れに染み渡る。

 満足して店を出て、ジムニーのドアを開けると、そこには「フゴーッ……」「ブフッ……」「ピー……」と、今日も盛大な三重奏が響き渡っていた。

 鞆の浦の石畳を歩き回り、遊び疲れたのだろう。三つ巴になって泥のように眠る彼らを起こさないよう、俺はそっとドアを閉めた。

 広島県の東端まで、ついに走りきった。

 明日の朝には、このジムニーは岡山県の土を踏むことになる。

 助手席の闇の中で微かに聞こえる寝息をBGMに、俺は次のルートへと思いを馳せた。さて、次はどんな景色と味覚が俺たちを待っているのだろう。


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