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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第2部 東回り

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尾道

2029年4月6日


 尾道駅近くのコインパーキングで目覚め、まずはジムニーに燃料を満タンに満たす。旅の準備に手抜かりはない。

 それから、尾道観光の代名詞である千光寺公園へと向かった。山頂へ歩いて登るルートもあるが、この巨漢な鼻ペチャ三匹を連れて行けば、十中八九、途中で全匹がバテて倒れる。若い頃なら友人たちと息を切らして登っただろうが、今は無理をしない。元経理マンらしく合理的に、千光寺山ロープウェイを選択した。

 三匹をぎゅうぎゅうに詰め込んだスリングを肩にかけ、ゆっくりと空中を進む。ゴンドラの窓から見下ろす街並みは、まるでジオラマのようだ。

 山頂に着くと、千光寺の桜はまだ蕾が固かったけれど、展望台から一望する尾道水道の景色は息をのむほど美しかった。

「よし、少し遊べ」

 広場でスリングを下ろしてやると、待ってましたとばかりに、パグのこまの興奮スイッチが完全に入った。短い足をフル回転させ、その場で嬉しそうにぐるぐると回り始める。つられてパイドのエルヴィスも高い声を上げ、こまの後を追いかけるように一緒に回転を始めた。

 山頂に響く愉快な「フゴフゴ」の二重奏。

 そんな若造どものお祭り騒ぎを横目に、長男坊のボスだけは相変わらずどっしりと座り込み、景色を眺めている。

 ボスももう一歳。立派な大人の仲間入りだという自覚があるのかもしれない。その少し大人びた背中を見て、俺はなんだか誇らしい気持ちになった。

 夕方、すっかり満足した三匹をジムニーに乗せ、尾道を出発した。

 次の目的地である福山に向けて、ゆっくりと車を走らせる。

 カチカチのスケジュールローテーションから完全に解放された今の俺にとって、明日の行き先を考える時間すらも極上の贅沢だ。

 カーステレオのボリュームを下げ、三匹の穏やかな寝息を聞きながら思う。

 さて、明日はどこへ行こうか。


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