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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第2部 東回り

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忠海〜三原市

2029年4月5日

 

 忠海から東へ、国道二号線バイパスをジムニーで駆ける。小高い丘の上に立つ「道の駅 みはら神明の里」へ滑り込むと、そこには雲一つない青空が広がっていた。展望デッキから見下ろす瀬戸内海は、まさに絶景という言葉がふさわしい。

 俺はスリングにボス、エルヴィス、こまの三匹をぎゅっと詰め込み、デッキを散策する。三原といえばタコが名物だ。ふと思い出し、売店で「乾燥タコ」を買い求めた。

 細かくちぎって手のひらに載せてやると、三匹とも目を輝かせ、おっさんの手のひらなどお構いなしに「フゴフゴ!」と夢中で食べ始めた。

 美味そうに咀嚼する相棒たちの頭を撫でながら、俺はポケットからマルボロを取り出して一服した。紫煙の向こうに広がる穏やかな海。会社を辞めてからというもの、この煙草の味すら、どこか自由の香りが混じっている気がする。

 一服のあと、デザート代わりに売店でソフトクリームを買った。

 俺が舌鼓を打っていると、それまでタコに夢中だった三匹が一斉にこちらを向き、無言の圧力をかけ始めた。鼻ペチャ三兄弟からの熱い視線と、彼らの口元からじわりと溢れるよだれ。

「おいおい、お前らには甘すぎるだろ……」

 そうぼやきながらも、指先に米粒ひとつ分だけすくい、それぞれの口元へ運んでやる。

「フガフガ!」

 三匹は指先まで舐め回さんばかりに大喜びした。まったく、食い意地まで似てくるものだ。

 出発しようとジムニーに戻ると、一人の年配ライダーが笑みを浮かべてこちらを見ていた。

「賑やかで可愛いねぇ。フレンチブルにパグかい?」

 聞けば、ここもライダーの定番休憩スポットなのだという。犬好きだという彼と、愛想を振りまく三匹とで記念写真を撮り、笑顔で別れた。

 こういう見知らぬ誰かとの、とりとめもない会話。

 それだけで、旅路は色鮮やかになる。俺はジムニーのシフトをローに入れ、再び東へと鼻先を向けた。

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