広島県呉市③
4月27日。
昨夜決意した通り、俺は呉の街のペットショップに足を運んでいた。
ケージの中にはトイプードルやマルチーズ、シーズーといった愛らしい仔犬たちが並んでいたが、俺の目はどうしても、ある二目から離れなかった。
フレンチブルドッグと、パグ。
我が家の絶対的エースであるボスの遊び相手が務まるのは、やはり同じ血を引く鼻ペチャでタフな奴らしかいない。それが旅を経て得た、俺なりの結論だった。
「良かったら、抱っこしてみますか?」
店員さんの優しい声に甘え、まずはフレブルを、続いてパグを腕に抱かせてもらう。
「……くぅ」
腕の中で小さく鳴き、俺の指を熱心に舐めてくる仔犬たち。そのあどけない温もりが胸に触れた瞬間、言葉にできない愛おしさが全身を駆け巡った。かつて、孤独の寒さに震えていた俺の心を救ってくれた、あのボスの体温と同じだった。
パグか、フレブルか。どちらか一人を選べば、もう一人をここに残していくことになる。
おっさんの不器用な胸の中で、激しい葛藤が渦巻いた。……いや、違う。俺は何を迷っているんだ。
今の俺には、自分の人生を、自分の力で幸せにする自由がある。
「すみません」
声に出してそう決めたとき、俺の心は驚くほど晴れやかだった。
「2匹ともください」
店員は目を丸くしていた。1匹だけお迎えっていう客は結構いるが2匹ともお迎えという客は珍しかったのだろう。
「え?2匹?ほんとにいいんですか?」
「はい、2匹いればさみしくないかなと」
明日からは、ボスと、この新しい二匹のチビ達との、目まぐるしくも愛おしい毎日が始まる。
一人ぼっちだったおっさんと一匹の犬の逃避行は、こうして、最高の『家族の物語』へと生まれ変わったのだった。




