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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第1部 いい日旅立ち・西へ

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周南〜岩国

2027年4月25日


 四月二十五日。あの日、衝動的に広島を飛び出してから、ちょうど一ヶ月が経った。

 以前、一人で周南市を訪れたときは、徳山港から特攻兵器の訓練基地があった大津島おおづしまへと渡り、静かに過去の歴史と向き合ったものだった。けれど、今の俺にはボスという最高の相棒がいる。今回は少し趣向を変えて、緑豊かな『周南市徳山動物園』へと足を運ぶことにした。

 顔が出ないよう、ボスをしっかりとスリングの中に抱き込み、受付で誓約書を交わしてトコトコと園内を歩き始める。

 ゾウやキリン、生まれて初めて見る大きな動物たちの姿や、野生の匂いに、ボスの視線はすぐに釘付けになった。スリングから身を乗り出し、「フゴフゴッ、フゴーッ!」と、耳をすませて忙しなく鼻を鳴らしている。それが未知の巨大生物への興奮なのか、それとも彼らなりの挨拶なのかは分からない。

 けれど、らんらんと輝くその目を見れば、こいつが今、最高に新しい世界を楽しんでくれていることだけは痛いほど伝わってきた。

「お前、退屈しなくてよかったな」

 胸元の愛おしい重みを感じながら、俺は優しくその背中を撫でた。一人きりの旅なら、きっと寂しく通り過ぎていた場所だ。ボスがいるから、俺の旅はこんなにも新しくて、温かい。

 十四時頃、名残惜しさを覚えながら周南を出発。

 傾きかけた太陽をバックミラーに映しながらジムニーを東へ走らせ、夕方、ついに山口県の東端・岩国へと到着した。

 赤く染まる瀬戸内海の穏やかな海と、鼻腔をくすぐる、すぐそこまで近づいてきた広島の空気。

 明日には日常(現実)へと戻らなければならないという切なさと、この小さな相棒とここまで走りきったという静かな充実感が、ルームランプを灯す前の薄暗い車内に、ゆっくりと満ちていくのを俺は感じていた。

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