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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第1部 いい日旅立ち・西へ

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延岡〜別府

2027年4月19日


 四月十九日の午後。延岡の道の駅に立ち寄り、新しく「延岡茶」の茶葉を買い求めた。

 ジムニーの助手席に並ぶ茶葉の袋を眺めながら、俺はフフッと満足げな笑みを浮かべていた。

 佐賀の嬉野茶、鹿児島の知覧茶、宮崎の都城茶、そしてこの延岡茶。順調にお茶のコレクションが増えていくのが、まるで自分の旅の足跡、あるいは新しい人生の帳簿が埋まっていくようで無性に嬉しかった。

 思えば、子供の頃から緑茶が大好きだった俺は、高校時代は茶道部に所属していたほどのお茶好きだった。のちに数々の大名を動かしたある天才軍師も、お茶を生涯の趣味にしたという。あの離婚という地獄を迎える前も、俺はたまの出張や旅行のたびに、こうして各地の宝物を集めていたのだ。あの頃の自分を、少しだけ取り戻せたような気がした。

 延岡から一気に北上し、温泉街・別府に到着した頃には、あたりはすっかり暗くなっていた。

 夜の街に漂う、硫黄の混ざったどこか懐かしい湯けむりの匂いが鼻腔をくすぐる。

 急ぐ旅ではない。別府を堪能するのは明日、太陽が昇ってからでいい。そう自分に言い聞かせ、今夜の根城となる温泉街近くのコインパーキングにジムニーを滑り込ませた。

 夜間料金を確認し、エンジンを切る。シートを深く倒すと、心地よい長距離ドライブの疲労感が一気に身体を包み込んでいった。横でボスが「フゴー」と早くも眠たげに鼻を鳴らす。

「お疲れさん、ボス。明日は温泉だな」

 相棒の頭を撫で、俺も静かに目を閉じた。

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