表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第1部 いい日旅立ち・西へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/106

都城〜鵜戸神宮

2027年4月18日


 四月十八日の午後。輝く太平洋を右手に眺めながら、俺は都城を離れ、日南海岸沿いを鵜戸神宮へとジムニーを走らせた。

 断崖絶壁に建つ鮮やかな朱塗りの門をくぐり、波の音が轟々と響き渡る洞窟の本殿へと、急な石段を降りていく。神聖な空気に包まれながら、俺は切実な思いを込めて二礼二拍手一礼を捧げた。

――どうか、もう二度と、琴音と鉢合わせしませんように。

 過去を自分の足で歩き直すための旅だ。これ以上、かつての亡霊に心を乱されるのは御免だった。

 参拝後、崖下に広がる奇岩「亀石」の背中にあるくぼみを目指して、名物の『運玉投げ』に挑んだ。男性は左手で投げるのがルールらしい。願いを叶えたい一心で、不器用な左手に込めた粘土の玉は、無情にも風に流されて的を外れ続ける。やっぱり、俺には運がないのか。

 諦めかけた、最後の五球目。

「……頼むぞ」

 静かに願いを乗せて放った一団が、綺麗な放物線を描き、見事に枡形の水の中へとポチャリと落ちた。

「入った……!」

 おっさん一人、周りの目を忘れて思わず小さなガッツポーズをしてしまった。

 そんな俺の奮闘をよそに、スリングから顔を出したボスは、たちまち境内の参拝客たちの人気者になっていた。

「うわ、可愛い! フレンチブルちゃんですか? 写真撮ってもいいですか?」

 旅行客の若いグループに声をかけられ、ボスはフゴッと偉そうに鼻を鳴らしてカメラにポーズを決めている。

「すみません、こいつ愛想だけはいいもんで」

 そう答えながらも、どこか鼻高々なお父さんのような気分になっている自分がいた。最後の運玉も入ったし、ボスはみんなを笑顔にしている。

 琴音の影に怯えていた暗い雲は、日南の突き抜けた太陽と、この最高の相棒によって、跡形もなく吹き飛ばされていた。駐車場へ戻り、海風の中で赤のマルボロに火をつける。

「さて、次はどこへ向かおうかね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ