都城〜鵜戸神宮
2027年4月18日
四月十八日の午後。輝く太平洋を右手に眺めながら、俺は都城を離れ、日南海岸沿いを鵜戸神宮へとジムニーを走らせた。
断崖絶壁に建つ鮮やかな朱塗りの門をくぐり、波の音が轟々と響き渡る洞窟の本殿へと、急な石段を降りていく。神聖な空気に包まれながら、俺は切実な思いを込めて二礼二拍手一礼を捧げた。
――どうか、もう二度と、琴音と鉢合わせしませんように。
過去を自分の足で歩き直すための旅だ。これ以上、かつての亡霊に心を乱されるのは御免だった。
参拝後、崖下に広がる奇岩「亀石」の背中にあるくぼみを目指して、名物の『運玉投げ』に挑んだ。男性は左手で投げるのがルールらしい。願いを叶えたい一心で、不器用な左手に込めた粘土の玉は、無情にも風に流されて的を外れ続ける。やっぱり、俺には運がないのか。
諦めかけた、最後の五球目。
「……頼むぞ」
静かに願いを乗せて放った一団が、綺麗な放物線を描き、見事に枡形の水の中へとポチャリと落ちた。
「入った……!」
おっさん一人、周りの目を忘れて思わず小さなガッツポーズをしてしまった。
そんな俺の奮闘をよそに、スリングから顔を出したボスは、たちまち境内の参拝客たちの人気者になっていた。
「うわ、可愛い! フレンチブルちゃんですか? 写真撮ってもいいですか?」
旅行客の若いグループに声をかけられ、ボスはフゴッと偉そうに鼻を鳴らしてカメラにポーズを決めている。
「すみません、こいつ愛想だけはいいもんで」
そう答えながらも、どこか鼻高々なお父さんのような気分になっている自分がいた。最後の運玉も入ったし、ボスはみんなを笑顔にしている。
琴音の影に怯えていた暗い雲は、日南の突き抜けた太陽と、この最高の相棒によって、跡形もなく吹き飛ばされていた。駐車場へ戻り、海風の中で赤のマルボロに火をつける。
「さて、次はどこへ向かおうかね」




