霧島市
2027年4月17日
夕闇が完全に辺りを包み込む頃、俺は隼人の街外れにある、ペット同伴可能なホテルの駐車場にジムニーを滑り込ませた。
とにかく早く身を隠したかった。ボスを使い慣れたスリングに手早く収め、チェックイン手続きを済ませようと、自動ドアをくぐってロビーへと向かう。
だが、フロントへと数歩歩みを進めたところで、俺の身体は凍りついた。
少し離れたカウンターの前で、手続きを待っている一人の女の背中。
見紛うはずがなかった。あのなだらかな肩のライン、少し癖のある髪のまとめ方――琴音だ。
――やばい、なんでここにいるんだ。
心臓が不快な音を立てて早鐘を打ち始める。嘘だろ、と胸の中で悪態をつきながら、俺は柱の影へと咄嗟に身を隠した。偶然にしては出来すぎている。彼女は確実に、俺の足取りを追ってここまで来ているのだ。
その時、俺の胸元でボスの身体がガタガタと小刻みに震え始めた。
俺の異常な心拍数の上昇と、身体の硬直をスリング越しに感じ取ったのだろう。ボスの喉の奥から、低く、地を這うような「ウーッ」という唸り声が漏れ出す。
「……静かに、ボス。頼むから」
俺は震える手でスリングの上からボスの身体を強く抱きしめ、その声を必死に抑え込もうとした。
もしボスがこれ以上声を荒らげれば、あの後ろ姿がこちらを振り向く。その距離、わずか数メートル。彼女の視線がこちらへ向くかもしれない恐怖に血の気が引いていくのを、俺はただじっと耐えるしかなかった。




