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長崎鼻〜隼人
2027年4月17日 午後
琴音が家を出ていったのは、他に男がいたからだった。
当時の俺は、目の前が真っ暗になった。だが、彼女を一方的に責める資格が俺にあるだろうか。二十年以上、俺はただの仕事人間だった。朝から晩まで会社に尽くし、家のことをほとんど顧みなかった。あの家の中で、琴音の心を飢えさせていたのは、俺の無関心だったのだ。
そんな琴音が、今、同じ九州にいる。偶然にしては出来すぎている。俺に、何か言いたいことでもあるのだろうか。
助手席で、ボスがブルっと体を震わせた。
「お前も、嫌な予感がするか」
ハンドルを握る手に、じっとりと汗がにじんだ。
じっとしてはいられなかった。長崎鼻から鹿児島市内へと引き返し、明石屋の暖簾をくぐった。軽羹、春駒、炒粉餅、高麗餅を、手当たり次第に買い込む。誰へのお土産でもない。それでも、紙袋が重くなるにつれて、少し息ができるような気がした。
ずっしりと重い紙袋を助手席に放り込み、アクセルを踏んだ。
混雑する市内を抜け、隼人方面へとルートを取る。バックミラーの中で、鹿児島の街が遠ざかっていった。




