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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第4部 北回り

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今治〜しまなみ海道

2029年10月12日

 

 今治のコインパーキングをあとにしたエブリイは、ついに世界に誇る海上ハイウェイ「しまなみ海道」へと進入した。

 青く煌めく瀬戸内海をまたぐ巨大な橋をいくつも渡り、俺たちがハンドルを切ったのは、しまなみの中央に位置する「大三島」だ。ここには、日本総鎮守と称される古社・大山祇おおやまづみ神社が鎮守している。

 神社近くのコインパーキングにエブリイを滑り込ませる。案内板を確認すると、やはり境内はペット同伴禁止のコンプライアンス。俺はボス、エルヴィス、こまの三匹に、車内で大人しく賢守(お留守番)しているよう言い含め、一人で鳥居をくぐった。

 一歩足を踏み入れると、そこは樹齢二千数百年とも言われる巨楠がそびえる、圧倒的な静寂の空間だった。

 拝殿の前に立ち、賽銭を投げて二礼二拍手一礼。

(これまでの旅の無事に感謝を。そして、この先の残りの旅路も、三匹と新しい相棒とともに、どうか安全に運行できますように――)

 胸の中でそう強く願い、深く頭を下げた。定年を過ぎ、犬たちと行くこの気ままな旅は、俺の人生にとって何にも代えがたい大切な流動資産なのだ。

 清々しい気持ちで境内をあとにし、お昼は門前近くの食事処へと向かった。

 注文したのは、瀬戸内の荒波で育った地魚がこれでもかと敷き詰められた「海鮮丼」だ。

 醤油を軽くまわしかけ、一切れ口に運ぶ。

「うまい……!」

 コリコリとした見事な歯ごたえの鯛、脂の乗った青物。噛むほどに上品な旨味が口いっぱいに広がる。やはり瀬戸内の魚は格別だ。俺は心から、この海の恵みが好きである。

 大満足で胃袋の検収を終え、エブリイへと戻ると、三匹が「どこ行ってたんだ!」とばかりにフロントシートから身を乗り出して迎えてくれた。

「よし、お前たち、神様への挨拶も済んだ。明日はしまなみ海道を渡りきって、いよいよ尾道おのみちへ入るぞ」

 神の島の加護を受け、俺たちの旅の帳簿には、また一つ忘れられない美しい1ページが刻まれるのだった。

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